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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第三章 文化祭まで
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第71話 助け合い

 奏は僕が零さんと雫さんを『お父さん、お母さん』と呼んだことに驚いていた。


「歩くんが、家族に…」

「お?奏ちゃんがめっちゃ恥ずかしがってる。」

「奏、歩くんと結婚したら、歩くんは家族になるのよ?」

「け、結婚はまだ早いです!」

「『まだ』ってことは、する気はあるんだね。」


奏は零さんに指摘されて、みるみる顔が赤くなっていく。そんな奏は僕の服の裾を握って、「当たり前じゃないですか…。」ぼそっとと呟くので、予期していなかった僕はそれをストレートにくらい、奏と一緒にドキドキしていた。


 奏はご飯を食べるのを手伝ってくれた。なぜなら、『今日は奏の言う通りにする』と言ったので、奏が「私が責任持ってお世話します!」という宣誓に逆らうわけにはいかなかったからだ。

鍋には豚バラ肉とキャベツを使った、僕が食べたことがない料理だった。ミルフィーユというらしく、奏は箸で一口サイズのミルフィーユをしっかりと掴み、僕の口元まで運んでくれる。


「はい、あーん。」


僕が口を開けると、奏は慎重にミルフィーユを食べさせてくれる。

柔らかい豚肉と、しっかりと味の染み込んだキャベツ。そして何より温かみがあり、体の芯まで温まる。


「…どうですか?」

「うん。味がしっかり染み込んで美味しいよ。」

「それなら良かったです。私もいただきますね?」


そう言って僕に食べさせたときに使った箸で、ミルフィーユを掴む。突如、頭の中に間接キスという言葉が浮かび上がり、ハッとした。


「あっ…」

「?」


奏は気にしていないようで、すでに箸をくわえていた。奏はご飯がほしいかったから呼んだのかと思ったらしく、お茶碗からご飯を少し取って、食べさせようと僕の口元まで運ぶ。

僕が食べないと奏も食べられないので、とりあえず口元のご飯を食べる。

奏が嬉しそうにしているのを見て、悪い気はしなかった。というか、間接キスのことを伝えたら、いろいろ気まずい。今日のことは目を瞑ることにしよう。


 その後は(間接キスに目を瞑ったので)何もなく、無事にご飯を食べ終えることができた。


「歩くん、お風呂に行きますよ。」

「え?」

「だって、その状態でお風呂の桶持てるんですか?」

「左ならできるよ。」

「…むぅ。」


奏の頬が膨らみ、慌てて奏に「やっぱり気が変わってきた。」と言うと、奏の頬の膨らみはなくなり、その代わり奏に腕を引かれてお風呂場まで連行される。

奏は引いていた腕に組んで、耳元で「間接キス、気付きました?」と言う。どうやらあれはわざとだったらしい。


「奏は平気でそういうことできるんだなって思った。」

「…歩くんにだけですよ?」


奏の指で口を押さえられたが、今の僕は奏に抵抗しようという気はなかったので、特に何もしなかったら、指が唇に変わり、すぐに口をふさぐものはなくなったが、不意をつかれてとっさに何か言うことができなかった。


「ほらほら、早く脱いでください。もしかして、一人でできませんか?」

「いやいや、できるって。…あれ?」


なぜか急に腕の痛みがなくなっていき、服もちゃんと脱ぐことができた。


「大丈夫で、あ…」

「ごめん。なんでも…」


急に声を出したため、奏は脱ぎかけのまま、こちらを見てくるのだが、その奏と目が合う。

ほとんど何も着けていない華奢な体と、その持ち主の驚いた表情が目に入り、すぐさま後ろを向いて奏が視野に入らないようにする。


「…えっと、ごめん。」


すたすたと足音が近づく音がして、背後から抱き締められる。しっかり密着してくるので、いやでも奏の実の感覚が伝わってくる。


「ちょ、奏!?」

「忍さんほどはないですけど、私だって、少しはあるんですよ?」

「!?」


奏は僕が着ているシャツの上から体を撫でるよえに触ってくる。いつもなら服とシャツは一緒に脱いでしまうのだが、今日は一枚ずつ脱いでいたので、ボディタッチは防がれた。


「…歩くん、私より細くないですか?」

「え、奏も細いでしょ。」

「やっぱり見たんですね?」

「え?かにっ!?」


奏は首元にはむっという効果音が付きそうな勢いで吸い付いてくる。そのままシャツの下に手を入れて数分奏の自由に体を触られた。

その後、奏に解放され、逃げるようにお風呂に入ったが、すぐに奏も入ってきた。その時、奏は前回のように水着は着けず入ってきたため、動けなかった僕は奏の攻撃を今度は正面から受け止めることとなった。


「はぁ、はぁ。満足した…?」

「まだまだですよ?」

「そうだよね!うん。うん?…ん?」


満足したと思っていたので、すかさず肯定してしまった。だが、奏はまだ攻め足りなかったようで、「攻められるか、攻める以外のお願いをなんでも聞くか選ばせてあげます。」と選択肢を迫ってきた。あの攻撃を受けた後にまた攻められるのは勘弁なので、すぐにお願いを聞くことを了承してしまった。


「ふふっ。じゃあ、今日は私が全部するので、歩くんはじっとしておいてください。」

「え、それって…」

「もちろん、前も。ですよ?」

「そ、それは駄目だって…!」

「お願い聞くんじゃなかったんですか?約束を守れない悪い子には両方しちゃいますよ?」


なぜこういうときに限って奏は頭が回るのだろうか。まあ、もともと頭が回るのは知っていたのだか。


「ほらほら♪おとなしくしておいたほうが身のためですよ?」

「はいはい。おとなしくしてまーす。」

「ふふっ。頭から洗いますよ?」


目を閉じて、奏の好きなようにさせるのだが、付けられたシャンプーがいつもとは違うように感じた。多分、奏がいつも使うシャンプーなのだろう。

(奏のにおい…)

少し考えるだけでぼーっとしてしまう。

奏から「お湯かけますね。」と声をかけられたので、黙って頷く。奏が5、6回お湯をかけると、今度はボディソープを泡立て始めた。

(さすがに前まではやらないだろうけど、さっきの間接キスを分かってやってるとなると…)


「先に洗ってくれませんか?」

「それは、前も…?」

「…歩くんの好きにしていいんですよ…?」

「…っ。」


奏から青い泡立てネットを受け取り、「始めるよ?」と聞くと、「はい♪」と嬉しそうな声が返ってくる。


「あ、そうでした。私まだ髪の毛洗ってません。」

「あー、うん。そうだね。」

「歩くんは体洗ってください。私は頭を洗うので。」


てっきり両方してと言われるものかと思っていたのだが、分担してやるらしい。

お風呂の鏡越しに奏と目が合い、奏は僕にしか見せない笑顔を見せてくる。


「…期待、してますよ?」

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