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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第三章 文化祭まで
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第65話 贈り物

 奏とあるものを買って帰ってくると、リビングから「おかえり~。」と聞こえ、キッチンを覗くと、誰もいないことを確認できたので、買ってきたものを冷蔵庫にしまっておく。


 買ってきたものを隠せたので、その足でリビングに戻ると、三人ともやはり僕と奏が遅くなったかは分からないようで、姉さんが「遅かったね。」と言う。ケーキ屋に寄っていたことは言わず、理由を説明すると、三人とも納得していた。


 机の上に置かれた鍋の蓋を取ると、あったかそうなシチューが入っていた。帰ってくる時間を伝えていたので、温め直したのだろう。


「ほら、二人とも手を洗ってきて。ごはんにしましょう。」

「はい。」「分かりました。」


奏と一緒に手を洗いに行くと、「あのシチュー、誰が作ったと思います?」と聞いてくる。

雫さんは料理が苦手と零さんから聞いたので、零さんか姉さんだろう。


「零さんじゃないか?」

「残念!シチューを作るのはいつもお母さんなんです。」

「でも、今日はそうとは限らないだろ?」

「いいえ、シチューのときはお母さんです。」

「なら、後で確かめるか。」


奏は勝ちを確信したらしく、小悪魔的な笑みを浮かべて、僕に不利な条件を提示してくる。


「じゃあ、歩さんが間違ってたら、お願い追加でいいですか?」

「それは…」

「なら、歩さんは二人まで選んでいいですよ。そしたら、公平じゃないですか?」

「じゃあ、僕が雫さんと零さんを選んだら、奏は姉さんを選ぶの?」

「まあ、そうなりますね。」


これなら、奏にも勝てるかもしれないので、こちらも条件を出してみようと思う。


「僕が当てたら奏に一つお願いできるってのはどう?」

「えっ?」


奏は信じられないような表情になり、「歩さんのお願い…」と小さく呟いた。多分聞き間違えなので、咳払いをして、「どう?」ともう一度聞く。


「歩さんばっかりメリットです。私のメリットも出してください。」

「え?あ、えっと、そうだな…。」


奏に二つお願いさせるのも僕としてはつらいので、他がないか考えていると、「じゃあ、私が決めていいですか?」と奏が言う。

まあ、お願い二つでもいいかと思い、奏に任せてみると、


「これから毎日、必ず一つお願いを聞くのはどうですか?」

「…え?それは…。」


二倍どころではなく、何倍にでもなりそうなお願いだった。

さすがに不平等だと訴えたかったが、奏の人差し指で止められる。


「さて、誰を選びます?」

「…雫さんと零さんにしよう。」

「それじゃあ、私は忍さんですね。」


誰が作ったかを予想してリビングへと入ると、奏は「誰がシチュー作りましたか?」と聞く。

それに答えて手を挙げたのは零さんと姉さんだった。

雫さんは「二人が頑張ってくれたの。」と嬉しそうに説明してくれた。

奏は苦笑いをしながら、「とりあえず、食べましょうか?」と言うので、席について奏と二人いつものテーブルで向かい合う。


(どうするのこれ?)

(両方するってことでどうですか?)

(え?そしたら、毎日お願い聞くってこと!?)

(そうなりますね。頑張ってくださいね?)

(頑張るって何を!?)

(それは、秘密です。)


奏と話さずコミュニケーションをしていると、雫さんに「二人とも、食べないの?」と言われてようやくシチューを食べ始めた。

シチューは野菜が大きめにカットされていて、とても食べ応えがあり、尚且つその野菜はしっかり煮詰められており、今までで食べたシチューの中で一番おいしかった。


「ごちそうさまでした。」

「歩くん、れーくんのシチューどうだった?」

「すごくおいしかったです。」

「そう言ってもらえて嬉しいよ。」


零さんはとてもいい笑顔を見せてきたので、この笑顔を町中で見せたら注目されないわけがない。

雫さんは見慣れているようでただ零さんを見て微笑むだけだった。その雫さんがいきなりこちらを見る。


「そういえば、さっき洗面所で何話してたの?」

「「っ!?」」


まさか雫さんに指摘されるとは思わず、体が跳ねてしまった。それは奏も同じだったようで、奏は反応してしまったことが恥ずかしかったのか、少し顔を赤くしている。


「まあ、この子たちなら、誰がシチューを作ったかとかで賭け事してたんじゃないかな?」

「なんでピンポイントで分かるんですか!?」


本当になんで当てられるのか不思議だ。まさか発言と行動で分かったなんて言ったりしないだろうか。


「奏の最初に『誰が作ったか』聞いたあたりで大体分かってたんだけどね。」

「お父さん、さすがに怖いです。」


これには同情するしかない。というか、最初から分かっていたということは普段から何をしているか、ばれているのではと思う。


 冷蔵庫にアレをしまっていたことを思いだした。


「奏、冷蔵庫からアレもってきてくれない?」

「?、あ、そうですね。分かりました。」


奏がアレを取りにリビングから出たときに、姉さんは「何か買ってきたの?」と言うので、本人も気づいていないらしい。


「お待たせしました。」

「お?何それ?」

「姉さん本当に気づいてないの?」

「え?何が?」

「姉さんの誕生日。」

「…。」

「え、そうなんですか!」

「それはおめでたいわね~。」

「おめでとう忍ちゃん。」


なぜか姉さんは初めて聞いた言葉のような反応をする。


「そ、そういえば、そうだったかも。」

「やっぱり忘れてたんだ…。」


姉さんは「あはは…。」と若干呆れ気味な反応をする。

零さんは奏が机に置いた箱を見て不思議そうに聞いてくる。


「でも、歩くん。誕生日ケーキにしては箱が小さくないかい?」

「ああ、それは、姉さん生クリーム苦手なんですよね。」

「ちょ、ちょい、別に食べられない訳じゃないって!」

「でも、渋った顔して食べるじゃん。」

「うぐっ。それは、そうだけど…。」

「だから、これを買ってきたんです。」


僕は箱の中から買ってきたものを取り出して姉さんの前に置く。姉さんはそれを手に持って驚く。


「こ、これは、プリンじゃないですか!?え、もしかしてあのお店まで!?まさか、帰りが遅かったのも…」

「いやいや、姉さん落ち着いて。これは、あのお店の支店だから。ほら、ここ。」


姉さんに地図アプリでお店の位置を見せると、姉さんは僕のスマホを奪って、「え!?ホントだ!知らなかった!」と大はしゃぎしていた。


「あ、全員分あるので、雫さんも零さんもどうぞ。」

「え?いいのかい?」

「はい。いろいろしてもらったので。」


特に奏がここで住むことを許可してくれたという面が大きいのだが。

零さんはやはり僕が何を思っているのか分かっているらしく、追求せず、「なら、ありがたくいただくよ。」と言って箱からプリンを取り出し、雫さんの前にも用意していた。

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