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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第三章 文化祭まで
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第63話 変化

 リビングに戻ると、零さんが起きていて、二人仲良く寝ていたことを聞かされ、奏が赤くなっていた。そんな奏を嬉しそうに眺めた零さんは、僕の首元を見て、「それは隠した方がいいかもね。」と言うので、湿布あたりの貼れるものを探すことにした。


 探してはみたものの、湿布が一枚だけ残っていただけで、それ以外の隠せそうなものはなかったため、その一枚を貼っておき、隠せなかったほうはなんとかごまかすことにしようと思う。


「とりあえず、ご飯作るか。」

「そう、ですね…。」


奏は少し落ち込み気味だったので、少しいたずらをして気分を上げようと思い、奏の耳にふっと息を吹きかける。


「にゃぁ!」


思っていたよりかなりびっくりしていたので、少し罪悪感が湧いてきた。でも、謝ると何か要求されるので、謝りはせず笑ってみた。


「…もう、歩さんいじわるです。」

「どう?少しは気分上がった?」

「…少しは…。」

「それは良かった。」


そう言って前を見た瞬間、耳にくすぐったい感覚が襲いかかった。


「っ!?」

「お返しですよ。歩さん。」


奏はされたときよりも嬉しそうに良い笑顔を見せた。これからは奏に仕返しされる覚悟を持っていたずらするほうが良いだろう。


 奏とちょっとふざけあった後、キッチンに横並びになって、朝と昼ごはんの準備を始めた。

零さんが、お昼は姉さんと雫さんと一緒にお出かけに行くらしく、お昼は外ですませると言ったので、いつもの2倍くらいの量を作る必要はなく、少し助かった。

まあ、元はと言えば、昨日の夜に二人でじゃれあって準備をしなかったのがいけなかったのだが。


「そういえば、零さんと雫さんは味薄めでも大丈夫なの?」

「えっと、多分大丈夫だと思いますよ?歩さんの味付けはあんまりお父さんのと変わりませんから。」

「へぇ。奏の家は零さんが作るんだ。」

「お母さんがキッチンに立つと何が起きるか分かりませんから。」


雫さんが火を消すのを忘れて、焦げた料理が出てくる様子がすぐに想像できてしまったので、まあ、そういうことなのだろう。


 お米が炊き上がった頃に、ちょうど味噌汁と主菜などが出来上がった。今日のメニューは鯵の塩焼きとだし巻き卵、サラダに味噌汁といった、まさに和食である。


 朝ごはんを運ぼうと思って気がついたのは、いつも使っている小さいテーブルでは、絶対に5人分の皿は乗らない。かといって、椅子は3つしかないので、全員が食卓で食べるのもできない。

奏も同じことを考えていたようで、「席どうしましょう?」と聞いてくる。


 結局、僕と奏がクッションに座り、テーブルで、他の三人は食卓で食べることにした。


零さんと雫さんは一口食べると、少し驚いた表情を見せて、


「うん。よくできてるね。」

「そうね。ちゃんとおいしいわ。」


と感想を言ってくれた。面と向かって褒められると恥ずかしいが、嬉しくもある。


「雫は今度二人に料理教えてもらったら?」

「れーくんひどい!」


零さんは雫さんは腕を叩かれているが、あまり痛そうにしていないので、雫さんが優しくしているのか、零さんが強いのかよく分からない。


 全員がごはんを食べ終わったときに、零さんが「作ってもらったから、皿洗いくらいはやるよ。」と皿洗いを引き受けてくれた。

その厚意に甘えて学校の準備をすることにした。


 制服に着替え終わり、リビングに戻ると、姉さんと雫さんが今日のお出かけの相談をしていた。


「奏のお洋服を買ってあげたいんだけど、あの可愛い服は着ようとしないの。私は着てほしいんだけどね。」

「そうですね。奏ちゃん、あんまり可愛い系のは着ないですね。でも、お風呂上がりの服で置いておけば着てくれると思いますよ。ね?弟くんも見たいでしょ?」


二人で話していたのに、いきなり話題を振られたので、つい肯定してしまったのだが、奏が可愛い系の服で隣で寝たら、手を出さずに済むかどうか心配になる。

雫さんは席から立ち、僕の手を優しく両手で握り、顔を近づけてきた。


「歩くん、奏に合う服買ってきてあげるから、奏が着たらちゃんと褒めてあげるのよ?」

「わ、分かりました。」


雫さんはいつもあまり開いていない目を開けて、「頑張るのよ!」と念を押してきた。

奏が寝室から出てくると、雫さんが見せる水色の瞳は重い瞼で防がれ、いつもの表情に戻った。


「何話してたんですか?」

「今日の予定を考えていたの。おみやげ買ってきてあげるから、期待していてね。」

「はい。楽しみにしておきます。」


奏はいつも通り僕の右隣に並んで体を寄せてくる。多分、無意識でやっているようで、雫さんに「いいわね~。」と言われて、慌てて少し離れていた。離れられても少し寂しいので、今度は自分から奏に引っ付くと、少し驚いた顔をしていた。


 奏も加わり4人で話していると、零さんが皿洗いから戻ってきて、全員が集まった。

奏は零さんが席に座ってから、「あの…」と前置きした。


「お父さんも、お母さんも、私が歩さんと付き合うのは、いいんですか?」


奏の一言で、一度全員が静まり返り、零さんと雫さんを見ると、少し驚いた顔をしていたが、雫さんはすぐに「私もれーくんも、ちゃんと応援してあげるわ。」と言い、零さんはそれに頷いていた。

それを見て、奏は僕の右腕を体で捕まえて、「それなら、良かったです。」と笑顔を見せた。

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