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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第三章 文化祭まで
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第59話 お願い実行その三

 うまいこと奏から逃げられると思っていたら、奏は僕を連れてお風呂に向かう。


 当たり前のように用意されている二枚のバスタオルを見て、覚悟しなおす。奏はそんな僕を見て、「ふふっ。」と笑う。


「…そんなに面白いか?」

「はい。とっても。」

「そこまで即答されると…」

「嬉しいですか?」

「…嬉しいけど、理性がもつか心配になる。」

「…襲っても、良いんですよ?」


なんでも受け入れると言いたげな奏は腕を広げて僕を待っているが、さすがにそこには飛び込めない。逆に襲われそうだ。

しかし、奏が襲われてもいいと言ったことが頭の中にすぐに入っていかず、返答に困る。


「…えっと、奏さん?そういうのは…」

「もちろん、歩さんにしか言いませんよ?」

「…今日攻めが強くない?」

「勝てる自信があるからですかね?」


当たり前かのように奏は返答するので、逆に僕が間違っているのではないかと思う。奏は僕に近づいて耳元で、「襲うのは私かもですね。」と言うので、これ以上攻められないように、こちらも何か対抗策を用意しなければならなさそうだ。


 ようやくお風呂場に入ることができたのだが、奏の姿に驚いた。そう、奏は水着を着ていた。それも、見覚えのある派手な装飾もない白のシンプルな水着だったため、目のやり場に困る。


「どうしたんですか?」

「え?あ、いや、なんでも…」

「ほんとですか?」

「う、うん。なんでもない。」

「…まあ、今回は見逃してあげます。」

「え?」

「後で、ですよ?」

「!?」


もしかすると、奏は今日早く帰れるはずだったのに、クラスの出し物を決めたせいで、甘える時間が少なくなったからここまで積極的なのかもしれない。


「今日は先に洗ってください。」

「え?それはいいけど…」

「はい。どうぞ。」


そう言って奏はボディソープを泡立てた青色の泡立てネットを渡してくる。前回と同じ範囲に泡をつけると、「…前も...」と声が聞こえる。


「え?」

「…前も、してほしい、です。」

「それは…」

「お願い、使います。」


お願いを使われたら、従うしかないだろう。青色のネットにボディソープを追加して再び泡立てる。奏を見ると、機嫌が良さそうに待っている。


 そこでふと思いついた。ここで奏に後ろから抱きつけば、リベンジできるのではないかと。なので、まずは安心させるため、奏に声をかける。


「おまたせ。じゃあ、始めるよ?」

「…はい。お願いします。」


奏が安心していることを確認し、奏を包むように抱き締める。


「にゃっ!?」

「…かにゃでさん捕獲、って感じ?」


抱き締めたのはいいのだが、ここからどうするのが正解なのか分からない。やられたことをやり返すのもありかと思ったのだが、奏の首元には泡がついているし、洗っている途中にするのはどうかと思い、また悩む。

悩んでいると、腕の中から「襲ってこないなら、襲っちゃいますよ?」と言われ、頭をフル回転させて、何をするか今日一番の頭の回転で考える。一つ案が出てきたのだが、これはしてもいいものかとまた悩む。


「あ、えっと、その…」

「…もう。」


奏は僕の腕を掴んで、僕の手を操作する。そして奏の実に触れたところで手の甲から握られ、柔らかさを感じてしまう。


「あ…え、あの…」

「…襲うなら、このくらいは、してください。」

「!?」


奏は僕の手を解放し、すぐさま腕の中で器用に動き、僕と向かい合った。真っ赤な顔を見せないようにして首元に近づいてくるので、思わず固まってしまう。

あのほむほむ攻撃がくるのかと思っていたが、奏は座っていた椅子から僕の膝上に移動し、体を密着させて、「かわいい。」と耳元で囁いた。


「!?」

「もう、歩さん、さっきからずっと固まってます。早く洗ってください。」


そう言われて伸ばしていた腕を引っ込めて、奏を洗おうとしたのだが、密着されているため、洗える訳がない。


「えっと、奏さん?引っ付かれると洗えない…」

「なら、私が次洗ってあげますから、このまま動かないでください。」

「え?あ…」


今日は奏には勝てそうにないので、奏に促されるまま、ネットを渡す。というか、取られた。

奏は膝上に座ったまま僕の体を洗うので、よく見ないで洗えるなと感心していたら、やはり洗いづらいのか膝上から降りるので、奏が洗いやすいように後ろを向くと、「ありがとうございます。」と感謝されたのだが、(半分強引ではあったが、)洗ってもらっている身からすれば、このくらいはして当然だと思う。


 再び背中を洗い始めたくらいで、違和感があった。奏の洗う場所が前回より明らかに前まできているような…。


「あの、奏さん?」

「どうしました?痒いところにでもありました?」

「いや、そうじゃなくて…」

「どこが痒いですか?前ですか?」


もうこれはわざとだと思い、「確信犯…」と呟くと、背中に薄い防御壁をつけた実を引っ付けてくる。


「っ!?」

「確信犯なら、こういうことも、いいですよね?」


肩に奏の頭が乗り、奏は「ふふっ」と笑う。


「今の歩さんはまな板の上の鯉なんですよ?」

「…っ。」

「それでも理解していただけないのならば、…分かりますよね?」


多分、ここで反抗すれば、今日の夜はいろいろされるのだろう。そうなると、奏の明日にもいろいろ影響が出そうなので、ここは肯定しておこう。


僕が肯定すると、奏は肩から離れて、「ようやく聞けますね…。」と言うので、なんだか身の危険を感じた。

なので、先に前を洗って、奏のする事をなくそうと壁にかかったピンクのネットに手を伸ばしたが、そこで、隠している部分を奏が使うネットで洗うのは駄目なのではないかと思いとどまった瞬間、奏に腕を掴まれた。


「そんなに『おしおき』してほしいですか?」

「!?」


いろいろとへまをしたらしく、僕の右腕は奏が持つ小さな谷に落とされる。


「私、歩さんが人肌苦手なの知ってるんですよ?」

「…どこから聞いたの?」

「忍さんからです。」


(いやまあ、姉さんしか知らないことだと思ってたんだけどなぁ?なんで言っちゃうかなぁ?)


「…でも、それは克服してほしいです。」

「え?」

「だって、気安く引っ付けないじゃないですか。」

「ああ、なるほど。…うん。頑張る。」


奏は僕のお腹辺りまで洗った後、僕にネットを返してきたので、最後の隠していた部分は自分のネットで洗えたので、思いとどまって良かったと改めて思う。

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