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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第三章 文化祭まで
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第58話 お願い実行その二

 奏と前回一緒にお風呂に入ったときは、奏のことを意識しすぎて、自分の心を落ち着かせるので精一杯だった。


「奏は僕とお風呂、嫌じゃない?」


そう聞くと、奏は上体を起こし、座る位置を変えて僕を引っ張る。そうして僕を抱き締めるので、僕も奏の背中に腕を回す。そうすると、奏は耳元で「ふふっ。」と笑う。


「私、歩さんといるときが、一番好きなんですよ?」

「…っ!それはっ…」

「歩さんは、私と一緒にお風呂入るの、嫌じゃないですか?」

「嫌じゃないけど、緊張、するかな。」

「私、歩さんに洗ってもらうの好きです。今だって、もっと、触ってほしいです…。」

「…もう、いっぱい引っ付いてるけど?」

「…これはこれ、それはそれです。」


その時、僕の首元を頬張った。唇だけでほむほむしているだけなので、痛くはないのだが、くすぐったい。


「ひゃ、か、奏、そこ、駄目…!」


奏は一度ほむほむするのを止めて微笑んだ後、またほむほむするので、お仕置きしようとするが、くすぐったいのが優先されてまともに動けない。


 しばらく経った後、奏はほむほむを止めて、脱力しきった僕を優しく抱き締めなおす。


「歩さんは、本当に私には弱いんですね。」

「そうした本人に言われても…」

「またしますよ?」

「それは勘弁。」


奏は笑ったと思うとすぐに困ったような表情に変わった。


「歩さんは、私にふさわしいとか言われたんじゃないですか?」

「…そうだね。」

「なら、私は、歩さんが良いってこと、周りの方々は、分かって、くれていないん、ですかね…」


そう言われてはっとした。悩んでいたのは、僕だけではなく、奏もそうだったのだと。僕は左腕を奏の背中にまわして、奏を支える。そして、残った右腕で奏を撫でる。


「大丈夫だよ。きっと、もうすぐ分かってくれる。」

「…本当ですか?」

「うん。もう大丈夫だから。」

「…ちょっとだけ、泣いても、いいですか?」

「いいよ。…明日、みんなにバレないくらいなら、だけど。」


そう言うと、奏は「分かってます。」と言って、僕の胸に顔をうずめた。


 奏は宣言通り少し泣いた後、僕の胸から顔を離して、「もう大丈夫です。」と言った。


「本当に?」

「はい。…あ、えっと…」

「?…どうかした?」

「あの…、服が、…ごめんなさい。」


服はお風呂に入ったら着替えるので、まったく問題ない。そして、謝ったらキスをするルールがあるはずなので、先程からずっと目線を合わせない奏に呼びかける。


「奏。」

「…?」


奏の顔が上がり、僕と目が合う。その時、僕は奏の唇を奪う。


「んっ…」


奏は少し驚いていたように見えたが、すぐに嬉しそうな表情になる。奏から唇を離しても、ずっと嬉しそうだったので、奏にはさっきまでの不安はなくなったみたいだ。


 そろそろ姉さんがお風呂から出てきそうなので、こちらも準備しようと思ったのだが、奏が膝上に乗っているので、動けない。


「あの、奏さん。」

「なんですか?」

「そろそろ降りていただけると…」

「…できるものなら、というのは?」

「…そんなご趣味が?」


言ってしまった後、すぐに後悔した。奏に弱点を知られているのに、こんな発言をすれば、大体どうなるか分かるだろう。


 奏は少し口を開けて僕の首元に近づき、先程までと同じようにほむほむする。


「っ!か、なで、駄目、だって…」

「…謝ったら許してあげます。」


奏が首元から唇を離したので、今しかないと思い、とっさに謝ろうと思ったが、謝ったらお願いが増えると思い、どうしようか迷っていると、奏は再び口を開く。


 ほむほむされるくらいなら、お願いが増えた方がいいと思い、謝ることを決心した。


「…前言撤回です。ごめ、んっ!?」

「残念でしたね。まだ私のターンです。」


謝ろうとしたら、奏が僕の唇を奪った。これは謝ったカウントにはならなかったようだ。


「歩さんがあんなこと言うのが悪いんですよ?」

「待って!悪かった。悪かったって、かにゃ!?」


 そこからは、僕にとっては、天国か地獄かよく分からない状態だった。奏が求められているのは分かるのだが、奏が話している間に謝ろうとしても、キスで中断され、なかなか終わらなかった。終わったのは姉さんが来てからだった。


「ずいぶんと楽しそうだね。奏ちゃん。」

「あ!忍さん。聞いてください。私、歩さんの弱点を見つけたんです!」

「へぇ~。弟くんに弱点か~。なになに?どんなこと?」

「なら、見ててください。こうやってですね…」


奏がほむほむする前兆を見せているので、奏を止めようとするのだが、右手は恋人繋ぎ、もう片方は奏の肩に触れたが、大して意味はなかった。


「ま、待って、か…」

「あむっ。」

「にゃ!?」

「ほぉ~。これは新発見だねぇ。」

「にぇ、にぇひゃんは、とめ、んっ!?」

「奏ちゃん、積極的だねぇ。」


キスから解放されたと思ったら、いつの間にか奏を支えていた左手はすり抜け、僕の肩を掴んで僕を押し倒した。


「どうですか?忍さん。」

「ん~。なかなか。んで、お風呂入らないの?」


奏が乗っているのに加え、疲労がどっときたため、動くことができない。奏も少し疲れたのか、僕に引っ付いて倒れている。


「二人ともそんなに疲れるまでやるとか、ラブラブすぎない?」

「今日は気分がのってしまったというか…」

「んじゃあ、奏ちゃん。お願いとやらはどうするの?」

「「え?」」

「あれ?二人ともなんか絶対させられるお願い的なことできるんじゃないの?」


いつから気づいていたのだろう。あまり変化がないように見せていたつもりだったのだが。


「いつから気づいてたの?」

「え?今日帰ってきたときくらいから?」

「そんなに分かりやすかったですか?」

「うん。だって、奏ちゃん、わざわざリビングで着替えたりしてたし…」

「えっ、それは…」

「奏…?」


まさか、あれはわざとだったのか、と奏を見る。


「あ、えっと。そういう気分の日も、あっても良いんじゃないですか…?」

「ねぇ、奏。攻める覚悟があるなら、攻められる覚悟もあるよね?」

「…でも、今やっても、歩さんは私には勝てませんよ?それでもやりますか?」


奏だけ弱点を知っているこの状況で襲っても、多分襲い返されるので、逃げたほうが安全なのかもしれない。


「…やっぱり、止めておこうかな。」

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