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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第三章 文化祭まで
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第57話 お願い実行その一

「辛いです…」


カレーを食べた後の奏は、終始こんな感じだった。一応姉さんに聞いたところ、中辛だったというのだが。これからは甘口のカレーの方が良さそうだ。


「奏、大丈夫?また、ホットミルクでも作ろうか?」

「うぅ。お願いします…。」


キッチンに行って牛乳に砂糖を前回よりも少し多く入れ、電子レンジで温めたのだが、前回より多く砂糖を入れたせいか、一度温めただけでは少し砂糖の感触があり、もう一度温めた。


 甘いものを早く出すという当初の目的は失敗してしまい、少し奏に申し訳なくなる。


 姉さんは僕がホットミルクを作っているのが分かったようで、さっき温めるときに使った容器を洗いながら聞いてくる。


「もしかして奏ちゃん、辛いって言ってた?」

「うん。だから、ホットミルク作った。」

「私の分ある?」

「あるから早くそれ終わらせなよ。」


 やっと奏のいるリビングにマグカップを持っていき、奏の前のテーブルに置く。


「ご…、遅くなった。ほら、飲んで。」

「ありがとうございます…。」


奏はホットミルクを飲むと、だんだん辛さが和らいだのか、少し落ち着いた表情になった。


「甘くて美味しいです。」

「それは良かった。」


そう言うと、奏は少し残念そうにして、「あと、三つですか…」と言う。


「そんなに残念そうにしないでくれ。どうせ気を抜くとすぐにカウント増えるからさ。」

「ふふっ。そういえば、忍さんまだお皿洗ってますか?」

「あー。さっき牛乳温めるときに容器使って、それも洗ってくれてたから…。」

「呼んだ~?」


姉さんがさっき作ったホットミルクの入ったマグカップを持ってキッチンから現れる。


「忍さん!ってあれ?歩さんは飲まないんですか?」

「あー。奏ちゃん気づいてないかもだけど、いつもより甘くしてくれてるから。これ。」

「え!全然気づきませんでした!」

「奏ちゃんが辛そうだからっていっぱい砂糖いれてたよ?」

「…一口飲みます?」


奏はこちらを見て、誘ってくるのだが、僕の飲みかけは後々奏が困るのではないかと思う。というか、こちらが耐えられる気がしない。姉さんが「…間接キス…。」と言ったことで、奏は少し赤くなった。


「私は、本望ですよ?」 

「…!?」

「おお。奏ちゃん、大胆だねぇ。」


ここまで言われたら断れない。奏からマグカップを受け取り、一口飲むのだが、やはりというか甘かった。もともと自分で飲むつもりはなかったので、かなり甘くしてもいいと思っていたが、ちょっと甘くしすぎただろうか。


「…どうですか?」

「…甘い。ちょっと甘すぎる気がする。」

「え~。私はこのくらいでいいと思うけど。」

「姉さんは馬鹿舌なだけでしょ。」

「ひどくない!?なら、奏ちゃんはどう思う?」

「さっきまでは辛かったので、あまり気になりませんでした。もう一度飲めば…、の、飲むんですか…。」


なんだか奏は困っているように見えた。


「やっぱり嫌じゃなかったか?」

「いえ、嫌ではないんですが、間接キスって初めてで、どう飲むのがいいのかなって思ってしまいまして。」

「そりゃ、弟くんが飲んだところから飲めば、弟くんの味も味わえるってことだよ、奏ちゃん!」

「ちょっと姉さん!変なこと言うな。奏が困るだろ。」

「…歩さんの味…。」


奏は僕が口をつけたところに口をつけて少しホットミルクを飲む。


「どう?奏ちゃん?」

「…歩さんの味、でした?」


なんで疑問系?と思いつつも次に起こることが予想できてしまった。なので、先にお風呂に逃げようと思ったその時、姉さんが口を開く。


「キスすれば、弟くんの味の確認ができるのでは?」

「「…。」」

「まあ、そのへんはお二人で楽しくってことで。じゃあ、先にお風呂行ってくるね。」


姉さんがリビングから出ていって、奏の方を見ると奏と目が合い、奏はマグカップをテーブルに置いて立ち上がる。そうして僕の膝の上にまたがる。

(あっ。これは駄目なやつだ…。)


「確かめても、いいですか?」

「この体勢で拒否できると?」

「なら、お願い四つ目です。歩さん、確かめさせてください。」


お願いを使われたら仕方ないので、大人しく脱力する。奏の重みで床に倒れる。すぐに奏は膝辺りから骨盤辺りに移動する。


「これなら私でも勝てそうです。」

「もともと奏には敵わないよ。」


そう言うと、奏は口元に手を当て笑って、「それでは、失礼しますね。」と言って唇を重ねる。


「…んっ。」


奏の唇が離れる。いつもより長かった気がしたがきっと気のせいなのだろう。そう思っていると、奏は再び唇を重ねてくる。


「んっ!?」

「…ごちそうさまでした。」


奏の唇が離れ、今度は僕の上に倒れる。そして僕の耳元で囁く。


「やっぱり、歩さんの味です。」

「…っ。」

「えへへ。歩さんが照れてます。」

「…照れるというか、いろいろ限界なんだが。」

「…歩さんは、手を出さないでしょう?」

「いや、出すかもしれないぞ。」

「その時は、歩さんが後悔すると思います。」


分かった上でこういうことをするのは、少し控えていただきたいのだが、今言うと、『引っ付きたいときに引っ付かせてください。』とか言いそうなので、下手に口に出さないほうがいい。


 奏は僕にぴったり引っ付いたまま、耳元で「お願い使ってもいいですか?」と言う。改まって言われると、少し緊張する。


「…なに?」

「あの、お風呂、一緒に…入りませんか?」

「…。」

「駄目、ですか…?」


正直、最初から言いそうとは思っていたのだが、いざ言われると恥ずかしい。それでも奏が望むなら、できるだけ叶えてあげたいと思う。

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