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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第三章 文化祭まで
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第56話 帰還

「はい。もちろんです。」


奏が立ち上がり、僕に左手を差し出す。何故かその時は右手を僕は出していた。普通、手をとりやすい左手を差し出すのだが。


 そのまま奏は僕の右手を掴んで僕を引っ張りあげる。


「歩さん、やっぱり軽いです。もっと食べたほうがいいんじゃないんですか?」

「ははっ。そうするよ。」


正面を向くと、北村君と目が合う。そして少し視線をずらすと廊下にいる服部さんとも目が合う。視線を北村君に戻し、奏と一緒に近づく。


「な、なんだよ。春川。」

「北村君、君には、いや、僕以外の誰にも、奏は渡さない。」

「うっ…。」


北村君は廊下に逃げようとしたのだが、服部さんが居たため、扉の前で足を止めた。


「駄目。ちゃんと話し合って。三人で。」

「…。」

「話してください。歩さんに何を言ったんですか。」

「秋山さんは、どういう人が好きなんだ?」


この期に及んでそんなことを聞くのか。そう思ったが、これは僕が口を出す場面じゃない。


「私は、強くて、カッコいい人がいいです。」


その言葉を聞いて、北村君は少し口角を上げたように見えた。


「ほら、秋山さんは強くてカッコいい人が好きなんだってよ。…なのに、なんでこいつが、こいつなんかが、秋山さんの彼氏なんだよ!おかしいだろ!こんな弱くて、すぐ泣いて、パッとしない奴が!」


確かに、僕は弱いし、すぐ泣くし、パッとしない。それでも、奏は僕を選んでくれた。奏は内面を見ているのだ。だから、北村君は対象にはならない。


「俺は、こいつより強くて、泣かないし、顔も良いだろ!なら、なんで…」

「私、外見だけの人には興味がないんです。北村さん。あなたは今、どういうふうに歩さんを捉えましたか?歩さんの内面を知ってるんですか?」

「…っ!」

「歩さんは本当に強い人です。私だったら絶対に折れてしまっていたと思います。」

「それでも、こいつは、パッとしないし…!」

「いえ、歩さんは決めるものは決める人です。パッとしないなんてことありません。ちゃんと考えてから、私を選んでくれました。」


その言葉が終わる頃には、北村君は座り込んでいた。廊下にまた二人で歩み出したとき、その小さくなった発信源はまた声を紡いだ。


「…なあ、最後に聞かせてくれ。秋山さんは俺のこと好きなのか…?」

「それは、好きか嫌いか、ですか?」


そう聞かれ、北村君は静かに頷いた。それを見て、奏は一言だけ言い残す。


「…嫌いです。特にあなたみたいな人は。」


廊下の扉の前でずっと待っていた服部さんは、僕たちが教室から出ようとすると、「後は任せて。」と言い、僕たちとすれ違い、空き教室に入る。


 教室に戻ると、他の生徒は皆帰ってしまっていて、鞄だけが残っていた。僕と奏はそれぞれ鞄を持ち、帰路についた。


 帰り道、奏に「ごめんね。遅くなっちゃった。」と謝ると、「これで三回目ですよ。」と言われ、

(遅くなるなんて三回も言った?)

と疑問を持っていると、「…謝った回数です。」と補足が飛んでくる。学校の間はそのルールは適用されないと思っていたので、わざわざ数えるなんてことはしなかった。いざ言われると、そんなに言っていたのか疑問になる。まあ、奏がそうだと言うのなら、そうなのだろう。


 マンションのエントランスに入ったとき、奏が僕の制服の裾を引っ張る。


「どうしたの?」

「あの、お願いのことなんですけど…。」

「ん?甘やかすってやつ?」

「えっと、変えてもいいですか?」


まあ、まだ実行前なのでいいんじゃないかと思い頷く。奏はそれを見て、小悪魔的な笑みを見せる。

(もしかして、やらかした!?)

エレベーターに乗り込み、扉が閉まると、奏は口を開く。


「歩さんがその日に謝った回数お願いできるというのは駄目ですか?」

「…。」

「駄目、ですか?」

「奏、その顔ずるい。」


奏も、それは分かっているようで、笑顔を見せてから、また上目遣いになる。

エレベーターは僕の部屋の三階まで上昇し始める。


 ずっとこの調子で行くのも後々耐えられなさそうなので、「分かった。それじゃあ今日は三つね。」というと、奏は僕の右腕に引っ付き、耳元で「大好きです。」と小さく呟き、すぐに離れて僕と同じ方向を見る。手はずっと繋いだままで。


 エレベーターは三階に着き、扉が開く。奏は僕の手を引いて部屋の前まで進み、以前渡した鍵で扉を開ける。

(ここまでくると、もう家族みたいなものじゃないのか?)

そう思ったが、今言うと、謝ることになり、お願いの回数が増えそうなので、口を閉じておく。


「二人ともおかえり~。」


キッチンから姉さんの声が聞こえ、料理をしているのだとすぐに分かった。一度キッチンに寄って、「ただいま。姉さん。」と言うと、「おかえり。」と改めて言われる。手元を見ると大体料理ができていたので、先に手を洗いに行く。


手を洗い終え、さらに着替えも終えて、リビングに戻ると、「あっ。」と自然と声が出る。料理を運んでいる姉さんと、着替え中の奏がこちらに注目し、姉さんは奏の方を見て事態を察したようだ。


「ごめん!見てない!見てないから!」


後ろに振り返り、両肘を直角にして手を上げる。他のことを考えてさっきの光景を忘れようとする。玄関までの通路が正面に伸び、そのまま玄関の扉が見える。

(もう二ヶ月もここで暮らしてるんだな。奏とはもう少しで二週間か。って、奏のこと考えてるし…)


 後ろからすたすたと足音が近づいてきて、後ろから抱き締められる。柔らかい感覚が背中に当たり、変な声が出てしまう。


「…っ!?」

「…歩さんのえっち。」

「…ごめん。」

「ふふっ。お願い追加ですね。」

「胸を押し当てながら言われても…」

「…うるさいです。」



 奏はその後すぐに僕を解放して僕に話しかける。


「服着ますから、ちょっと待っててくださいよ?」

「分かっ…。え?」

「どうかしましたか?」

「か、奏?もしかして今、ふ、服、着てない…?」

「…その事考えるの禁止です。お願い使います。」


足音が遠くなり、布が擦れる音が聞こえ、その後すぐに「もう…いいですよ?」と言われてようやく自由に動けるようになった。


 クッションを持ってきて、席に着くと、奏はいつも通りに隣に座る。姉さんは今日は奏の正面に座って姉さんが初めて作ったカレーライスを食べ始めた。

ようやくテスト終わりました。これからは二日に一つくらい投稿するのを目標にしたいです。

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