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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第三章 文化祭まで
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第52話 温もり

 ホットミルクを飲んだからか、時刻はまだ22時だというのに、眠くなってきた。それは奏も同じのようで、奏のほうが限界が近そうだ。それは姉さんも分かっているようで、「私はお風呂入ってくるから、二人はもう寝ててもいいよ。片付けはやっておくから。」と言って、僕たちが安心して寝られるように気遣ってくれる。


「奏、もう寝るか?」

「…んっ。」


奏は僕の方を向いて両腕を広げている。つまり、奏は僕が運べと言いたいようだ。正面から抱き抱えると降ろすときに大変なことになる未来が予想できたので、奏の膝裏と背中に腕をまわして、俗に言うお姫様抱っこをして、奏と一緒にベッドに向かった。


 奏をベッドに寝かせると、ぱっちりと開いた奏の目が僕をとらえている。



「起こしちゃったか?」

「当たり前じゃないですか。お姫様抱っこなんてされたことなかったですし。」

「それは、奏が抱っこのアピールするからでしょうよ。正面からいったら降ろすとき大変だしさ。」

「そうですけど…、するときは先に言ってほしいです。心の準備ができないというか…。」

「それは奏もだと思うけど?」

「…ばか。」


奏は自分も例外でないことを自覚したようで顔を真っ赤にしている。そんな奏の隣に寝転がり、掛け布団を奏にもかかるように広げると、いつもより赤みがある奏は笑顔を僕に向けてくる。


 気がつけばカーテンの隙間から光が差していて腕の中で奏が僕を見つめていた。


「お、おはよう、奏?」

「お、おはようございます。」


挨拶だけが返ってくるので、この気まずい状況で奏にどう話しかけるか悩んでしまう。とりあえず奏の逃がさないようにしている方の腕を奏と逆のところに移すと、奏は、「あっ…。」と少し寂しそうな声を漏らす。


「えっと、もっとしてほしかった?」

「…はい。でも、時間的にも今日は帰ってきてからもっとしてもらいます。」


奏に言われて時計を見ると、時計は5時半を指しており、昨日とほとんど変わらない時間だった。昨日と変わらない時間ということは、昨日と同じように準備をしていたら登校する時間になるということなので、今からまた引っ付けば遅れることに間違いないだろう。


 昨日は早く寝てしまったので、朝ごはんの準備ができていないと思い、冷蔵庫を開けると、昨日姉さんが作ったであろう料理が入っていたので、姉さんには心の中で感謝しておき、冷蔵庫に入っていた肉じゃがと野菜炒めをレンジにかけて今日の朝ごはんにした。また、昨日姉さんが買ってきていた食パンを使い、ベーコンと卵を焼いて斜め、サニーレタスを少しちぎって、半分にした食パンに挟むことでサンドイッチが完成した。サンドイッチは今日の昼ごはんにして、温め終わった朝ごはんと茶碗にごはんをよそってリビングに持っていく。


 朝ごはんをリビングに持っていくと、さっきまで寝ていたであろう姉さんが奏に支えられながら、目をこすっていた。


「ごめん、姉さん。起こしちゃったか?」

「ううん。奏ちゃんに起こしてもらったから。」


姉さんが羨ましいだろという目をするが、僕はほとんど毎日したりされたりしているので、全然羨ましくない。



「そういえば、弟くんさっき何作ってたの?もしかして、私の料理が嫌だったから、昼は自分で作るってことじゃ…」


姉さんが作ってくれていた料理を運び終え、三人で朝ごはんを食べ始めると、姉さんがそんなことを言うので、姉さんは量が少ないことを知らないようだ。なので、姉さんには真実を伝えることにする。


「さすがにそこまで鬼畜じゃないよ…。でも、朝と昼の分にしては量が少なかったんじゃないか?」

「もしかして忍さん、三人分しか作ってなかったんじゃないですか?」

「…あ、そうかも。レシピ見ながら作ってたから、三人分しか作ってなかったかも。」


てへぺろという表現が正しいのか分からないが、姉さんは握った手を姉さん自身の頭にコツンと当てて少し舌を出す。そんな姉さんを見て、ため息をついた。


「そうだろうと思ったよ。というわけで今日の昼は急遽作ったサンドイッチだよ。」

「え、弟くんのサンドイッチ初めてかも。」

「そうなんですか?」


そう言われると、確かに二人には作ったことはないのだが、おじいちゃんが来ていたときに昼ごはんに楽だからといって一緒に作っていたことを思い出す。


「ああ。二人には作ったことないけど、おじいちゃんには作ったことあるんだよね。」

「へぇ~、おじいちゃん美味しいって言ってた?」

「いや、味が薄いって言われたよ。一応調味料があったからそれでなんとかしたけど。」

「あはは。おじいちゃんらしいね。まあ、私の作った肉じゃがは味が濃いと…。」


姉さんが作ってくれた肉じゃがはかなり味が濃く、まだまだ調整が必要のようだ。


「ねえねえ奏ちゃん。どうやったら弟くんの胃を掴める味になるのかな?」

「え、えぇ?私はどちらかというと慣れで料理しているので、聞かれてもどう答えたらいいか…」

「将来結婚しても料理で喧嘩にならなさそうだねぇ。」

「け、結婚ですか!?」

「え?だって、その辺まで考えてるんじゃないの?」

「そ、それは、まだ、早い、というか…」

「へぇ~。『まだ』ねぇ~。」

「な、それは、言葉のあやです!」

「じゃあ、本気で考えてないと?」

「それは、違います、けど…。」

「二人とも、その話題は終わり!もうすぐ行く時間だし、奏は着替えて、姉さんは皿洗い。OK?」


このままいくと収拾がつかなさそうなので、このへんで切り上げておく。奏には助け船になったのか、奏はすぐに着替えに行った。姉さんは少し不貞腐れていたが、僕が着替えに行こうとすると、仕方なさそうに席を離れた。

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