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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第二章 二人は一人
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第50話 当たり前と有り難いこと

 奏がレジ袋の中に氷と水を入れたものを持ってくるまでに服を着替えようと思い、脱げかけの制服の上を脱ごうとしたが、右手首が痛かったので、下だけ着替えて、上は戻ってきた奏に手伝ってもらった。その後奏が患部を冷やしてくれたので早く痛みが治まった。あの時奏を心配させないように黙っていたら、今頃奏が奏自身を責めていただろう。氷が完全に溶け、水しか入っていないレジ袋を患部から離すと、奏は心配そうに聞いてくる。


「もう、大丈夫なんですか?」

「うん。心配かけてごめん。」

「歩さんが謝らないでくださいよ。元はと言えば私のせいなので…。」


奏のテンションが低く、こういうときに姉さんがいると良いのだが。というか、姉さんはいつ帰ってくるのだろうか。すでに6時を過ぎており、姉さんは大抵遠くに行くときは連絡を入れてくれるのだが、今日は基本的には奏と話していたので、奏に何か言っているかもしれないと思い、奏を見ると、奏もすぐに視線を合わせてくる。


「どうしたんですか?」

「えっと、姉さんがどこに行ったか知らないか?」

「あっ、忘れてました!」

「え?忘れてた?」

「はい。今日の朝に、忍さんに歩さんに話したいことがあるから部屋を空けておいてほしいってお願いしたんです。それで、『なら、終わったら電話してね。そしたら帰るからさ。』って言われてたんでした!」

「だから、姉さんがいなかったんだな。じゃあ、奏は姉さん呼んでおいてよ。僕はごはん作るからさ。」

「なら、私も後から手伝いますよ。電話はすぐに終わりますし、もしかしたらまた手が痛くなるかもしれませんから…。」

「奏は気にしすぎだって。もう大丈夫だから。」

「でも、今日は手伝わせてください。万一のことも考えて、二人でやった方が良いですよ。」


こうなった奏は、多分何を言おうと、絶対についてくるので、おとなしく奏に手伝ってもらうことにした。


 結局、奏は姉さんに、もう帰ってきても大丈夫だ。という報告と、ちょっと会話しただけで、今ではキッチンで僕の隣に立っている。


「姉さんいつくらいに帰るって?」

「あまり遠くまで行ってないそうなので、すぐ帰るって言ってましたよ。」

「そうか。なら、早めにできるのにしようか。」

「そうですね。あ、チャーハンとかどうですか?それなら、手短にできますし。」

「そうだね。今日はチャーハンにしようか。」


そうして僕と奏は三人分のチャーハンを作ることにした。料理中に手が痛くなることもなかったので、スムーズに三人分作り終わった。


 作ったチャーハンをテーブルに運んでいると、玄関から解錠音が聞こえ、姉さんが帰ってきた。姉さんはリビングに入ってくると、誘われるようにできたてのチャーハンを見ていたので、「先に手洗ってきなよ。」と言うと、上機嫌で手を洗いに行った。


 姉さんが手洗いのついでに、お湯張りのスイッチを入れた音が聞こえ、設定するのを忘れていたことに気付き、奏は「忘れてました。」と言うので、「僕も忘れてた。」と返すと「似た者同士ですね。」と言って笑顔を見せる。案の定、戻ってきた姉さんに「やっぱり二人とも雰囲気変わったよね…?」と呟いていた。


「そういえば、二人ともどんなこと話したの?」


あの時には部屋にいなかった姉さんは、何を話していたのか気になるのだろう。まあ、話すことでもないかと思っていたが、奏が何があったのかを(責任の話も含め)事細かに話すので、こちらが恥ずかしくなる。


「へぇ~。奏ちゃんからはそこまで考えてたんだ。でも、弟くんも頑張るねぇ。大丈夫?来年まで持つ?」

「…大丈夫。自分で決めたから。」

「ほぉ。言いきるねぇ。ならさ、今日は二人でお風呂入りなよ。」

「「…え?」」

「え?だって、覚悟を決めたなら、実践でも出来るか確かめないとさ。」


奏の方を向くと、奏も同様にこちらを向いており、互いに目を逸らすことになる。


「まあまあ、二人とも、物は試しだからさ。行っておいでよ。」


そんなこと言われてもと心の中で思いつつ、再び奏を見ると、正面から「…信頼、してますよ?」と言われるので、逃げ道はないようだ。


 お風呂場まで行くと、姉さんから、いつもより多くバスタオルを渡される。せめてもの気遣いなのだろう。


 奏はタオルで胸から下を隠し、僕は腰辺りから下を隠す。いざお風呂に入ると鼓動が早くなり、さらに警戒心が強くなるのを感じる。相手は奏だと自分の心に言い聞かせ、奏が緊張しないように警戒心を弱める。


「…あの、歩さん?大丈夫ですか?」

「へっ!?あ、え、うん。大丈夫!?」

「…大丈夫そうじゃないですね。ほら、座ってください。背中流してあげますから。」

「え、え?あ、わ、分かった。」


奏に促されるまま、いつも使わない二つの風呂椅子のうちの片方に座る。


「じゃあ、まずは頭からやりますよ?目と口は閉じててくださいね?」

「わ、分かった。」


目を閉じると、背中に男子にはないやわらかい実が当たる。

(ちょ、奏!?当たってるけど!?奏は気にしてないのか!?)

意識しているのは僕だけなのだろうか。


「あの、お湯かけますよ?」


奏は気にしてなさそうだった。口を閉じていろと言われているので、頷くと、ゆっくりとお湯をかけられる。何度かお湯をかけられたところで、「もう大丈夫ですよ。」と声をかけられる。奏は気にしてないのか聞こうとすると、


「あの、奏は…」

「ほら、次は体洗いますよ。」


先に進めようとするので、聞くことはできなかった。奏もドキドキしているのだろうか。こちらだけがドキドキしていると考えると、なんだか嫌な気分になる。


 奏が背中を洗うために青色の泡立てネットでボディソープを泡立たせ、背中を洗ってくれている間にもう一つのピンクの泡立てネットをとり、奏用に泡立てる。


 奏は背中と両腕を洗ってくれた後、僕に青色の泡立てネットを渡してくる。


「えっと、前は、歩さんが、やってください。」

「あ、うん。ありがとう。ほら、奏はこれ使って。」

「はい。ありがとうございます。」


奏にはピンクの泡立てネットを渡し、奏に背を向けて、タオルで隠していた部位とそれより下を洗う。洗い終わり、奏の邪魔にならないようゆっくりお湯をかけ、もう一度腰辺りにタオルを巻いて、背中を向けつつ、奏に声をかける。


「もう、向いても大丈夫か?」

「ひゃ、だ、駄目です!もうちょっと待っててください!」


奏は風呂桶にお湯を汲んでかけている音が何度か聞こえ、その後、「…どうぞ。」と声がかかる。奏のほうを向くと、たたんだタオルを胸辺りに片腕で押さえながら、もう片方の手で先ほど泡立てたピンクのネットを持っている。お風呂に入っているからか、それとも恥ずかしいのかは分からないが、奏の顔は少し赤くなっていた。奏からネットを受け取ると、奏はすぐに後ろを向く。

(奏もドキドキしてるのかな…?)

奏が驚かないように、「あ、洗うぞ…?」と声をかけると、「ど、どうぞ。」とだけ返ってくる。

なぜかもう50話です。

ちなみに、コイツら付き合って一週間もしてないぜ!マジかよ!

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