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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第二章 二人は一人
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第49話 攻めと受け

 終礼が終わり、今日出された課題を解いてから帰ることにした僕と奏は、少し学校に残り、課題を終わらせた。僕らが帰る頃には半分以上のクラスメイトは教室から出ていっていたので、かなり静かな状態だった。奏と一緒に廊下を歩いていると、奏は「あの…」と声をかけてくるので、「どうしたの?」と返すと、「何でも、ないです。」と、何かありそうに返してくる。


 帰り道ほとんど奏と話さず帰ってきたが、部屋に入ると、いきなり奏に腕を引かれて、鞄を落としてしまったが、奏に当たらなかったのでよかったのだが、いきなり鞄を落としたので、手がヒリヒリと痛む。奏はいつの間にか鞄を置いていたようで、奏に制服のまま寝室につれていかれる。玄関に姉さんの靴がなかったので、姉さんはどこかに出掛けているようだ。


 寝室に連れられてきて、速攻でベッドに押し倒される。


「か、奏さん?あの、これは?」

「…私言いましたよね?『覚悟』しておいてくださいって。」

「い、言ってたけどさ、制服が、しわしわになるんじゃ…」

「大丈夫ですよ。夏服は洗ってもすぐに乾きますから。」


奏に右手首を押さえられ、奏は僕を見逃す気は無いようだ。どうしてここまで奏がやる気なのか分からないが、今日の奏は昨日までの奏とは違う。そんな奏がまた口を開く。


「私、昨日思ったんです。歩さんの腕の力、そこまで強くないですよね。」

「…!」

「やっぱり。そんなんじゃ他の女子に襲われたとき、どうするんですか。」

「いや、僕を見てる女子なんてそういないでしょ。」


そう言うとすぐに奏の顔がムッとした表情に変わった。


「自己肯定感の低いから、そう思うだけですよ。私、今日白瀬さんに言われました。『歩は気づいてないかもしれないけど、周りから結構いい目で見られてるよ。』って。」

「それで、なんでこんなことに?」

「だって、歩さんが先に取られたら嫌じゃないですか…。」


ああ、そうだ。奏は僕を心配してこうしてくれているのだ。僕が他の女子に襲われても、初めては奏に捧げていると、そうしたいのだろう。でも、それは、違うと思い、僕は言い返す。


「僕は初めては奏にしかあげようとは思わないけど、その保証は今じゃなくても良いじゃないか。その保証の一回でも、できる可能性があることは奏も分かっているだろ?奏が望まないタイミングでできるのも、奏の今後に影響するのは、僕が嫌だ。だから、せめて僕が責任をとれるようになってからしよう?それまで、僕のは誰にも渡さないからさ。」

「…ちゃんと、考えてくれてたんですね…。なら、絶対に、約束、守ってくださいよ。」

「ああ、だから、その時まで、待っててくれるか?」

「…はい。」


そう言って奏は僕の上にゆっくりと体を預けるように落ちてくる。今はこれで良かったのだろうと思う。僕のためにも、奏のためにも。


 僕に体を預けた奏の頭を撫でていると、奏は体を起こして「そういえば」と前置きをする。


「歩さんは、髪長い方が好きですか?」

「え?なんで?」

「歩さんが長い方が好きなら、伸ばそうかと思って。で、どうですか?」


今の短い髪の奏は、元気な女子というイメージで、奏といえばこの長さしか見たことがない。長い髪の奏を想像してみると、清楚なイメージが湧いてくる。しかし、その長い髪は洗うのが手間になるのではないかと思ってしまう。


「長いのも、良いと思うんだけど、手間にならない?」

「ああ、それは、良いんですよ。歩さんが好きなようになりたいんです。…やっぱり長い方が好きですか?」

「見ないと判断できないけどさ、奏は、今のままでも、可愛い、けど…。」

「恥ずかしいなら言わないでくださいよ!私も、恥ずかしく、なるじゃないですか…。」

「それは、ごめん、ん!?」


今の今までこの『謝ったらキスで口を塞ぐ』というルールを忘れていた。奏はほんの5秒前まで恥ずかしそうな表情だったのだが、今はしてやったりという表情に変わっていたので、ここまでが計算のうちだったのだろう。


「歩さん、忘れてましたよね?」

「…はい。」

「今日は歩さん、ダメダメですね。」

「ああ、今日は、奏には勝てそうにないや。」

「ふふっ。まあ、髪のことは個人的に聞きたかったので、まあ、冬くらいには肩辺りまで伸びると思いますよ?だから、そのときにもっと伸ばすかどうか、また聞きます。」

「そうか。それじゃあ、話も終わったことだし、そろそろ降りていただけますか、奏さん?」

「何言っているんですか。今日は歩さんの弱点を探すんです。」


そう言って奏は僕のシャツのボタンを外し始める。抵抗しようと思ったが、右腕は押さえられているので動かせず、左腕だけでも奏をどかそうとしたが、奏は体勢を崩し、僕の上に落ちてくる。


「うっ!?」

「あ、歩さん!?大丈夫ですか!?」


奏はすぐに僕の上から移動して、倒れた僕の隣に女の子座りをして、大丈夫か聞いてくる。


「ぼ、僕は大丈夫…。奏こそ大丈夫か?いきなり押してごめん。」

「わ、私は大丈夫ですが、歩さん、すごい痛そうな声でしたけど…。」

「あ、ああ、大丈夫。びっくりしただけだからさ。」


正直、奏が倒れたときに、押さえられていた手首に力が入り、かなり痛かったのだが、奏に余計な心配をさせないようにしたつもりだったのだが、奏は僕の右腕を気にしていている。いっそのこと本当のことを言った方が良いのではないかと思ったので、「ちょっと手首が…」と言うと、「やっぱり…」という反応が返ってきて、やはり言わないべきだったかと後悔する。

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