第48話 彼女とこれから
案の定、姉さんは起きてから機嫌が悪かった。食卓に座った姉さんは、奏に構ってもらっていたので、昨日作っていた料理を冷蔵庫から出し、暖め直してお皿に取り分ける。机に三人分の料理を並べていると、姉さんは僕と奏を見比べて、「なんか雰囲気変わった…?」と呟いていた。
朝ごはんを食べ始めるとすぐに姉さんは、「今日のは弟くんが作ったんだね。」と言うので、味で分かるものなのかと思いつつも、肯定の意を示した。
今日は姉さんが皿洗いをすると言うので、皿洗いは任せて、寝室に入り、学校に行く用意をする。
制服も着たので、奏と一緒に登校できるように鞄も持ってリビングに戻る。奏は先に着替えていたらしく、すでに鞄まで持って行く準備万端だ。時間になるまで、ソファーで三人で話していると、姉さんは「そろそろ時間じゃない?」と言い、僕らを送り出してくれた。
やはり、登校中の視線は痛く、見ないでほしいと思うばかりだった。
学校に着くと、より一層視線が多くなる。奏の登校時間でなければ、これよりもっと多い量になる。席に着き、時間を確認すると、まだ8時だったので、予習を進めることにした。
少し時間が経ち、予習も一区切りついたので、休憩と思っていると、奏から視線を感じる。
「えっと、どうかしたか?」
「あ、いえ、何やってるんだろうなって気になって…。でも、私が予習したよりもっと後のことだったので、どうやって解くんだろうって考えてました。」
「じゃあ、教えれるところは教えようか?」
「いいんですか?でも、歩さん、休憩するんじゃないんですか。」
気にかけてくれているのは分かるのだが、朝は奏に主導権があり、奏に良いようにされていたことを思い出して、少しからかってみようという気持ちが
「今日は帰ったら奏で休憩するから大丈夫。」
「もう!そういうのは、誰も見てないところでしてください!」
「見てなかったら、良いのか?」
「…駄目じゃ、ない、です、よ。」
「…っ!」
奏が身動いながらそんな返しをしてくるとは思わず、自然に鼓動が早くなるのを嫌でも感じるて、奏から顔を反らす。これをいい機会と思ったのか、奏は追撃するように手で円をつくり、僕の耳元に当ててくる。
「歩さんが悪いんですよ?今日は覚悟しておいてくださいね?」
「…!?」
奏をからかうつもりだったのだが、かえって奏の主導権を強めることとなってしまった。奏は僕から離れると、天使というよりは小悪魔のような笑顔を見せるので、今日は一日中奏より優位に立つことはないと感じる。
奏に優位をとるのは諦めて、今日はおとなしく奏の言うことを聞くことにする。本題であった予習を奏に教えていると背後から声がかかる。
「お二人さん、朝から見せつけてくるねぇ~。」
「真冬か。おはよう。あと、見せつけてない。」
実際、見せつけたいと思ってしている訳ではない。奏だって、見せつけたいと思ってはないだろう。
「嘘だ~。だって傍から見たら、誰も寄せ付けたくない~ってアピールしてる感じだよ?」
「そう?まあ、奏が嫌がることをされないなら、それで良いよ。」
「わぁ。秋山さん守られてるねぇ。」
真冬が調子に乗り始めたので、この辺で奏に否定してほしかったのだが、奏は「…はい。」と答えてしまうので真冬は「わぁ。こっちもこっちだったかぁ。」と独り言を呟く。
「あ、そうだ、歩。秋山さん借りてもいい?」
「なんで僕に聞くんだ。奏が良ければ良いだろ。」
「ほぉ。あくまで対等関係であると…。」
ここで時間を使っても何もなさそうなので、適当に反応を返して、さっさと真冬と奏を行かせようとする。
「あーそうそう。ほら、用事があるなら早く行かなくていいのか?夏樹そろそろ来る時間じゃない?」
「おぉ、そうかも。じゃ、彼女借りてくね。行こ!秋山さん。」
「え、あ、はい!」
真冬に奏が連れていかれたので、一人になってしまった。奏に教えるつもりだったので、教える相手がいなくなり暇になってしまった。
少しすると夏樹が教室に入ってきて、僕の後ろの席に座る。「なあ、春川。」と声をかけられたので、夏樹の方を見ると、夏樹はこれまで見たことのない真剣な顔になっていた。
「えっと、そんな険しい顔してどうした?」
「さっき廊下で聞いたんだけどさ、今日の昼から成績上位者が張り出されるってさ…。」
「そうなのか。で、それがどうかしたのか?」
「春川、お前は多分やらないことだろうけどさ、ふゆとテストの点数でどっちが高いか勝負してるんだよ。」
「はあ。まあ、僕らがやったら奏がずっと勝ちそうだな。」
「だろ?で、だ。勝った方は相手に好きなこと一つさせられるんだよ。」
「つまり、夏樹、負けそうってことか?」
「…。」
黙るということはそういうことなのだろう。しかし、真冬が夏樹に何をするのだろう。いまいち想像できない。
「ま、まあ、次勝ちにいけば良いじゃないか。ほら、今なら数学教えても良いよ。」
「ホントか!よし!先生、お願いします!」
どうやら、教える相手ができたので、暇になることはなさそうだ。
一つの区切りまで一通り教えたのだが、夏樹は机に突っ伏して、「分かるようで分からん。」と呟いていた。まだまだ先は長いのだが、大丈夫か不安になり、もっと上手い教え方がないか考えることになった。
結局奏と真冬の二人が帰ってきたのは、予鈴がなった後で、奏は本日の学校にいる間僕と目を合わせようとしなかった。
<注意>
○投稿主がテスト期間のため、12月初めまで投稿頻度ガタ落ちの可能性が高いです。
○今まで約1200字を目安に書いていましたが、これから約2000字を目安にしたいと思います。(タイトル考えるのがめんどくさい訳ではないよ!)
<感謝>
作品評価&ブックマークありがとうございます!




