第24話 料理対決にて
料理を運び終え、用意されたクッションにそれぞれ座ると、二人は僕に向かって、
「まずは弟くんから。」
「まずは歩さんから。」
と、どちらの料理がおいしいかが気になるようだ。
まずはハンバーグに箸を伸ばすことにした。僕としては味の薄い料理の方が好きなので、何もつけずに食べた。いつもと同じ味だと分かり、これは姉さんが作ったのだと分かる。
次に奏が作ったであろう肉じゃがに箸を伸ばす。前に作ってくれた肉じゃがと同じ味がしたので、奏が作った肉じゃがと確信した。
まあ、どちらがおいしかったと二人に言う必要があるので、料理を作った人が分かっても、意味はないが。
「まあ、とりあえず二人とも冷めないうちに食べたら?判定は食後にしよう。」
そう言うと、二人は手を合わせてから箸を取った。姉さんはハンバーグから、奏は肉じゃがから、二人とも黙々と食べていた。
全員が食べ終わり、食べ終わったお皿をキッチンに持っていき、お皿を洗っていると、奏がキッチンに入ってきた。
「お姉さん、いい人ですね。」
「まあ、家族の中では、一番信頼してる。」
そう言うと、奏はすぐに僕の後ろを通り過ぎようとした。お茶を出そうとしたのだと思い、奏を通した。
通したと思いきや、奏は体に手を回して密着してきた。幸い、手にはお皿を持っていなかったので、お皿を落とすというようなことはしなかったが、正直抱きつかれるとは思いもしなかったので、体が跳ねてしまい、奏に笑われる。
「どちらがおいしかったですか?」
「あっ、え、えっと、そうだな…」
「別に私のことは気にしなくていいんですよ?」
「物理的には気にするけどね。」
「そ、それは、いいじゃないですか。」
「いや、流石に男女二人が密着するのは誰から見てもまずいと思うけど。」
そう言うと、奏は僕を解放し、冷蔵庫を開けに離れた。やはり、もともとお茶を取りにきたようだ。
「後で、もう一度聞きますから、答えを準備しておいてくださいね?」
笑顔を見せる奏に分かったと伝えると、奏はキッチンから出ていった。
お皿を洗い終え、リビングに行くと、お茶の入ったコップとコーヒープリンが置いてあった。昔から僕はコーヒープリンが好きだったちめ、姉さんも僕の好みが分かっているのか、僕の部屋に来る度にコーヒープリンを買ってきてくれる。心の中で姉さんに感謝すると、姉さんは分かったのかこちらを見て笑顔を向けた。その後も何もなかったかのように奏は楽しそうに話をしていた。僕がクッションに座ると、二人とも話を終え、部屋の中が緊張した。
そんな緊張を吹き飛ばす声で姉さんはスプーンをマイクのようにして、司会を始めた。
「それでは、審判が参りましたので、これより、第一回料理対決の結果を発表いたします。それでは、弟くん、結果を。」
「えっと、第一回?料理対決の勝利は、肉じゃがです!」
パッと奏の顔が明るくなり、それを微笑ましそうに見る姉さん。やはり、肉じゃがを作ってくれたのは奏だったようだ。
「姉さんが作ってくれたハンバーグもおいしかったけど、今回のソースいつもより味が濃い気がしたんだよね。」
「ああ、それはね、弟くんのキッチンにある調味料だけで、いつものソースが作れなかったってのもあるし、奏ちゃんの好みが分かんなかったからっていう理由でちょっと濃いめで作ったからね。」
「え?そうだったんですか?」
「そうだよ~、弟くんは薄味の方が好きだからね~、奏ちゃんも気をつけなよ。」
「分かりました。勉強になります。」
姉さんはうんうんと頷いて、後は二人でとでも言いたげに立ち上がり、
「それじゃ弟くん、お風呂先に入っちゃうね。」
と、言って風呂場に行ってしまった。二人で残されたので、何か話をと思っても、何も出てこなかったので、三人分の食べ終わったコーヒープリンの容器とコップを洗うという理由で逃げることにしたが、奏がついてきてしまい、逃げられなくなった。




