第23話 ストレッチにて
「奏ちゃん、私と料理対決だ!」
その言葉を放たれた奏は、すごく驚いていたが、すぐに驚きの表情を消して、了承していた。食べる量は減らしてくれと目を向けるが、二人とも頑張ってたくさん作ってしまうだろうと予想できた。
まだ時計は16時を回っておらず、今のうちに家でするトレーニングをしようと二人の邪魔にならないよう、寝室に向かった。
トレーニングを初めて少しすると、寝室に奏が入ってきた。家でやるトレーニングを姉さん含め誰にも見せたことがなかったので、見られると少し緊張してしまう。
「奏も、やってみる?」
「え?私ですか?でも、私そこまできつそうなのできませんよ。」
「あ、いや、これじゃなくて、ストレッチとかでもいいんだけどさ。奏と一緒にやった方が楽しくできるかなって。」
「歩さんはそういうことパッと言うのが駄目なんですよ。もう、仕方ないですね、ストレッチくらいなら一緒にやりますよ。」
そうして奏と一緒にストレッチを始めたのだが、正直、奏はストレッチがいらないほど体が柔らかかった。
「奏、すごく体柔らかいんだね。」
「そうですか?周りに比べて柔らかいなとは思ったことはありますが。」
「いや、実際柔らかいと思うよ。ストレッチいらないくらいには。」
「それなら、私が歩さんのコーチというか、まあ、そんな感じでやってみますか?」
「きっと優秀なコーチだなぁ。」
奏は上機嫌で「ふふっ」と笑っていた。優秀なコーチが新しく就いたことで、僕のトレーニングの終わりは毎度楽しくなりそうだななどと思っていると、急に視線を感じた。視線の先には姉さんが見ていた。
きっと、奏は寝室に入ってきたときにしっかりと扉を閉めなかったので、少し扉が開いていたのだ。そこから姉さんはこちらを見ていた。
「いつから見てた?」
「え?」
奏は気づいていなかったのか、すぐに扉の方をむいていた。姉さんはそのまま扉を開け、寝室に入ってきた。
「弟くんがストレッチに奏ちゃん誘ってたときくらいから?」
「それって最初からってことだよね?」
「まあ、そうなるかな。」
「え?あっ、えっと…」
「そうだ、奏ちゃん。そろそろ晩ごはんの準備しない?」
「あっ、は、はい。そうですね。で、では、私はこの辺で。」
奏は頭を下げ、寝室から出ていった。寝室に残された僕は、もう少しストレッチを続けることにした。
ストレッチが終わり、課題を解いていると、ノックの音が聞こえた。立ち上がり、扉を開けると、そこにはエプロン姿の奏が立っていた。上目遣いできょとんと顔をかしげるので、鼓動が早くなるのを感じた。
「あの、どうかしましたか?」
「ちょっと奏が可愛すぎてフリーズしてた。」
「もう、そういうのはいいですから、ごはんできましたよ。」
どうやら、もうごはんの時間だったようだ。時計を見ると、18時半を指していた。手を洗いにキッチンに向かうと、運ばれる前のごはんと味噌汁、ハンバーグ、肉じゃががあった。今日の晩ごはんはいつもより豪華だなと思い、手をしっかり拭いてお皿をリビングに運ぶことにした。




