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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第五章 夏休み
116/116

第116話 誰かのためになりたくて

 次の日、お昼過ぎにおじいちゃんとおばあちゃんに別れを言い、未来さんにマンションまで送ってもらえることになったものの、車酔いしやすい歩はすぐに酔ってしまい、道中で何度か休憩を挟んだ。


「大丈夫ですか、歩くん?」

「だ、大丈夫。多分…」

「すみません、歩様。私の運転が下手なばかりに…!」

「いや、未来さんの運転は、全然下手じゃないよ…。ただ、僕が酔いやすいだけ…」


決して未来さんの運転は下手ではない。ただ、なぜか零さんの運転では酔わなかっただけだ。


 休憩を終え、何とかマンションまで送ってもらった。

荷物を運ぶのも手伝ってもらい、玄関で帰り支度をする未来さんに挨拶しにいく。


「では、歩様、奏様、これからも頑張ってくださいね。」

「「はい。」」

「忍様はお二人の面倒を見てあげてくださいね。」

「任せてよ!」

「では、半年後、お互い元気で会いましょう。」


静かに扉が閉まり、廊下を歩く音が消えてから、音がならないようにゆっくりと鍵を閉めた。


「歩くん、体調は大丈夫ですか?」

「まあ、何とか。いいね、車酔いしないのって」

「それぞれですもんね。今日は休んでいてください」

「ごめん。助かるよ」


奏は人差し指を歩の口に押し当て、「『ごめん』は不要ですよ?」と、にっこりと笑う。


 忍は二人が仲良くやっているのを見て、颯爽とその場を離れ、荷物の仕分けに向かった。

そして、奏の鞄から猫の着ぐるみが出てきたことに少し驚きつつも、クローゼットに皺がつかないようにハンガーにかけておいた。



 奏に座らされたソファーで休憩した歩は、気持ち悪さが無くなり、腕と体を伸ばして、奏を手伝おうとキッチンへ向かう。


「えっ、歩くん!?」

「ん?…どうしたの?」


奏は慌てて調理場を手を伸ばして隠すと、歩をキッチンから押し出して、「今日は休憩しててください」とお願いを使う。


「きょ、今日は自信作なので、まだ見せたくないというか…その…」

「…分かったよ。今日は楽しみにしてる」

「…はい。楽しみにしててくださいね」


歩がキッチンに入らないことを示すと、奏は素早くキッチンに入っていった。



 その日の晩ごはんは、歩の好きな肉じゃがが入っていて、口の中でじゃがいもがほろほろと崩れていく。


「うま…!」

「今回は自信作だったので、そう言ってもらえると嬉しいです」


歩のご飯がどんどん減っていき、歩としては珍しく、ご飯が一番早く無くなっていた。


「すっごいご飯進む。これ」

「ふふっ。よかったです」


隣に座る奏の笑う顔を見ていると、歩はさっきはなぜ隠したのかが気になってきたが、聞くべきではないと判断して、聞くのは止めておいた。

もしかしたら、肉じゃがだけは奏が作れる味として、優位をとりたかったのかもしれない。


「ホントに奏ちゃんも上達したね」

「歩くんだけに頼りっぱなしなのは、少し悪い気がしますし、私だけができることも増やしていきたいです」


奏は楽しそうにご飯を食べ進め、いつの間にか三人とも食事を終えていた。


 さすがに何もしないわけにもいかない歩は、立ち上がって皿洗いをしようとすると、今度は忍に止められる。


「弟くんは今日は休んでて。代わりに私が奏ちゃんを手伝うからさ」

「時間がかかるかもしれないので、先にお風呂入っててください。間に合えば私も行きますから」

「…二人がそこまで言うなら、先に入るよ」

「はい。長風呂は駄目ですよ?」

「はいはい。」


歩は奏の行動に違和感を覚えつつ、仕方なくお風呂場に向かった。



 歩がお風呂の扉を閉めたのを確認して、奏と忍はある作業に取りかかる。


「そういえば、奏ちゃんは将来何かしたいことってあるの?」

「え、したいこと、ですか…あ、歩くんと…」

「弟くんと一緒ならなんでも、は駄目だよ?」

「え、えぇ…?」


言おうとしたことを制限されてしまい、本格的に考えて始めるが、正直何も出てこない。

それだけ歩に依存していたのだと今一度確認したように感じ、ほんのりと頬が赤くなったのを忍に指摘されて、さらに頬を赤くすることになった奏は、口をパクパクしてしまう。


「まあね?私としては弟くんと奏ちゃんがいちゃいちゃするのは構わないんですよ。ただ、弟くんも前に聞いたときに『奏と一緒に仕事がしたい』って言うからさ、どっちかに何かしらの芯がないといけないと思うんですよ。」

「た、確かに。仕事が決まらずに迷惑をかけるのは駄目ですよね……」

「そういうこと。だから候補を一つや二つ出していただけると非常に安心するんですよ。と、いうわけで、何かある?」

「う、うーん?」


結局その日は、歩が風呂から早く出てきてしまったので、雑談とともに計画も中断となった。

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