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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第五章 夏休み
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第113話 可愛い子には旅をさせよ

 歩き始めて約十分、道中の畑でおじいちゃんと春奈さんに会った。


「歩様、奏様。どちらまで行かれるのですか?」

「奏と一緒に公園まで歩こうかと思って。奏をおすすめのところに連れていってあげたくて。」


僕が話した理由に、春奈さんは「気をつけて行ってくださいね。」と言葉をかけてくれる。

おじいちゃんからうちわをもらって、目的地へと向かうために、再び歩き始めた。



 奏は先程言ったことに対して、「公園に行くんですか?」と不思議そうな顔をしていた。


「昨日行った市内にすごく近い場所だけどね。」

「なら、そこまで遠くないですね。」


遠くないと言っても、2キロは離れているのだが、まあ、30分もあれば着くので、そこまで遠くないのかもしれない。


「またおんぶしなくても大丈夫?」

「あ、あれは草履に馴れてなかったからですし…!」


むー、という効果音が合うような頬の膨らみを見て笑っていると、奏にポコポコ叩かれる。

痛くはないし、見ていて可愛いので、少しの間大人しく叩かれてみると、奏は僕が反省していないことが分かったらしく、叩くのを止めた。


「ちゃんと反省してください…。」

「反省してますって。」

「もう、歩くんは嘘ばっかりです。」


奏は「でも、誰かが嫌な思いをする嘘はつきませんよね。」と付け足して、怒った顔は笑顔に戻っていた。

その笑顔が直撃して顔を逸らすと、奏に「ほっぺが赤いですよ。」と笑われる。


「いきなりその笑顔は、ずるいじゃん…。」

「えへへ。」


奏はさらに嬉しそうにしながら、僕のキャップを押し上げる。


「本当に可愛いですね♪」

「…『かっこいい』で褒められたいけどね。」

「もちろん、歩くんはかっこいいですよ。でも、今は可愛いです。」


奏に頭を撫でられると幸せな気分になるが、当然普通の道なので、この通りのご近所さんはいる。

なので、視線が集まって、非常に逃げたい気持ちになる。



 ようやく公園に近づいてきたところで、奏が「やっぱり遠いかもです…!」と言うので、すぐそこだと教えると、「そうなんですか!」と嬉しそうにする。

 奏を歩くスピードを上げたのは良いものの、十字路を真っ直ぐ進んでいき、公園はそちらの方向にはないので、奏にその事を言うと、奏は頬を赤くして、「案内、お願いします…」と呟く。


「絶対僕より奏の方が可愛いじゃん。」

「…うるさいです。」


奏が拗ねたところで公園が見えてきた。

 公園に着くと、夏休みということもあるのか、子供連れの親が多かった。

人が予想より多かったので、出来るだけ多くの人が座れるように、奏をベンチに座らせて、僕は立つことにした。


「歩くんは座らないんですか?」

「使いたい人がいるかもしれないし、子供連れの人は特に。」


奏にそう言うと、向こうの方でお父さんに子供の面倒を見させているらしい母親が「座ってもいいですか?」と聞いてくる。すぐに「どうぞ。」と肯定すると、「ごめんなさいね。」とお礼をして、ベンチに腰かけた。


「ね?座りたい人もいるでしょ?」

「なら、私も立ったほうが…」

「奏は歩き馴れてないから、座ってて。また足痛めるよ?」


奏はそれを聞いて大人しく座り、公園にある遊具を見回す。


「歩くんは、どの遊具が楽しかったですか?」


この公園の遊具はいくつかあるけれど、何度も来たことがあるのに、僕はまだブランコしか遊んだことがない。

それは、あの人たちが僕を外に出そうとしなかったのもあるし、僕自身が他の人と関わらないようにしたかったからだ。


「なら、今から遊びませんか?」

「え?」


口に出していなかったはずなのだが、奏は立ち上がながら僕の手を引き、子供たちが何人か集まっているブランコの前に僕を連れていく。


 奏は子供たちに外に向ける笑顔をつくり、「使ってもいいですか?」と聞く。

子供たちは動きを止めて奏を見たり、すぐに頷いたりと、様々な反応をしてくれる。


「歩くん、乗って良いですって。」

「うん。みんな、ありがとう。」


順番を飛ばして譲ってくれた子にお礼を言うと、その子は嬉しそうにする。

 ブランコの座るところに立っていた子もいたので、タオルを敷いてブランコに座ると、昔とは違って足が地面についてしまう。

当然だが、足がつかなかったときは、ただブランコに座るだけで、揺れることはなかった。

ただ、今は奏が背中を押してくれる。

 振れはだんだん大きくなると、奏は押すのを止めた。

そういえば、ブランコはどうやって止めるのだろうか。誰かに止めてもらうのだろうか。


「奏、そろそろ止めてほしいかも。」

「ブランコは自分で止めれますよ。」

「ど、どう止めるの!?」


いろいろとツッコミがありそうだが、あんなに高くまで振れたことがなかったので、少し怖かった。

 結局、奏が少しずつ遅くしてくれて、ブランコから降りることができた。

さっきまでいたベンチに今度は僕と奏の位置が変わって座っていた。


「楽しかったですか?」

「ブランコって、あんなに高くまで行くんだね。でも、楽しかった。」

「それならよかったです。」


奏が嬉しそうにすると、聞き馴染みのある声が後ろからかかる。


「…春川?」

「っ!」


咄嗟にベンチから立ち上がり、声が聞こえた方を見ると、そこには柄の悪そうな二人組がいた。

そして、僕はその二人を知っていた。ただ、名前は覚えてない。

 中学時代に噂をばらまいたパーマをかけているこの男は、紛れもなく中学時代の彼だった。いじめの元凶と言えばそうなのだろう。

もう一人は金髪に染めていて、チャラいというのが正しいのだろう。


「…何の用?」

「まあまあ、そんなに警戒すんなって。」

「久しぶりだなぁ?あの時を思い出すなぁ。お前も覚えてるだろ?俺らにいじめられてた頃をな。」


そして、2人の視線は奏に向く。

この2人にされたことが即座に頭の中で繰り返され、この2人がこの後することなど容易に想像できた。


「まさか、この子がお前の彼女?」

「ははっ。ありえねー。あの春川が彼女とか。」


奏の肩がピクッと動いたのを見て、奏が怒っているのが分かるが、この2人は奏のことなど気にせず、話を続ける。


「ねえ、君。俺らと遊ばない?どうせ暇でしょ?」

「春川なんかより楽しいことしてあげるよ?」


奏はすぐに「嫌です。」と一言だけ言う。

 奏の行動にイラついたのか、パーマの男は奏に手を伸ばした。

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