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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第五章 夏休み
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第108話 彼氏の両親

 歩くんの祖父母だと思っていたら、私の祖父母でもあったこの家に滞在してから1日が経ちました。

 メイドさんがいたのは驚きましたが、皆さん優しい方々なので、お話をしているだけでも楽しいです。

どうやら、今日はこの辺りの地域では花火大会があるそうで、今日の夜は忍さんと未来さんが同伴として、花火大会に行くそうです。

 ですが、歩くんが少し…いえ、かなり落ち込んでしまっています。



 ーーー約2時間前のこと


 お昼ごはんも終わり、花火大会のことを聞いてから部屋に戻ると、玄関の呼び鈴が鳴り、歩くんが少し怯えていて、不思議に思っていると、廊下から怒鳴り声が聞こえてきました。


陽子(ようこ)様、孝太郎(こうたろう)様、お荷物を…」

「私の物に触らないで!」

「も、申し訳ありません…」


未来さんが謝る声が聞こえて、襖を開けて廊下を覗くと、知らない男の人と女の人が未来さんに怒鳴っていました。

あの人たちは誰なのでしょうか。

 襖をさらに開けようとすると、いつの間にか隣にいた歩くんの手が私の腕に乗って、動きを止められました。


「…あの人たちに関わらない方がいい。いや、関わったら駄目だ。」

「えっ…?」


私の腕に乗った歩くんの手の異常な震えから、あの人たちがどんな人なのか分かりました。


「あの人たちが、歩くんの両親…なんですか?」

「…。」


歩くんは俯いて、何も話してくれません。でも、ここまで歩くんが怖がっているのは初めて見ました。

少しだけ開いた襖を閉めて、部屋の端っこに歩くんの左隣に座ります。歩くんの手の震えが止まるようにぎゅっとその手を握って。

今は、こうすることが一番良いと思うから。



 ーーー約30分前のこと


 また未来さんに対する罵声が聞こえてきて、パチン!と大きな音が響き、立ち上がったその時、襖が勢いよく開いて、女の人が現れました。


「ああ、あなたが奏ちゃんね。可哀想。あんな子の彼女にされちゃうなんて。」

「あ、歩くんは…!」

「『お前』は本当に他人を不幸にする存在なんだから、他人に関わろうとするな。本当に生まれてこなければよかったのに。」

「…ごめんなさい。」


歩くんから力無い声でそう言うと、廊下から男の人が、「君もご苦労だね。」と言い残して、女の人を連れて玄関に向かっていった。

 玄関の扉が勢いよく閉められた音がした後、未来さんが扉に鍵を閉めにいき、できるだけ音を立てないように鍵を閉めて、今度は私たちがいる部屋に来ました。


「歩様、奏様。大丈夫でしたか?」

「歩くんが…ちょっと…でも、未来さんも、それ…」


私が未来さんの左頬にできた赤い痕のことを言うと、未来さんは右手でその痕を隠しました。


「私は毎度なので慣れていますから。それより、歩様。」

「…ごめん、未来さん。あんな親で…」

「歩様が悪いのではありません。私が至らなかっただけですから。」


未来さんは歩くんを元気づけようといろいろとしてくれたのですが、歩くんの調子が上がることはありませんでした。



 昨日遊んでいた4匹の猫ちゃんたちと、忍さんがさらにやってきて、猫ちゃんは歩くんの上に乗らず、近くに座っていました。


「忍さん。あの人たちは、両親…なんですか?」

「…うん。そうだよ。弟くんには容赦ない当たりをして、半年前も…っ。」


半年前…、受験結果が出た頃だと思いますが、多分、その時にも同じことがあったのでしょう。


「『また』、助けられなかったな…」


忍さんの頬に涙が伝い、落ちた涙が服に染みていた。

(私のできることはなんだろう…)


ーーーそして、現在に至る


 歩くんと二人きりになりたいという理由で、忍さんと未来さんには退出してもらい、猫ちゃんたちは忍さんと未来さんについていってくれました。

 歩くんの名前を呼んで、歩くんが顔を上げたところで唇を奪います。

いつもより遥かに長いキスに、歩くんは少し苦しそうにしていましたが、そんなことはお構い無く、唇を離しません。

 歩くんから唇を離して、一度歩くんを確認すると、少しだけ、表情が明るくなったように見えます。


「歩くんは、私のこと好きですか?」

「大好き…だ、んっ。」


正直に答えられる歩くんにさらにキスをして、さらに好きになってもらいます。


「んむっ。じゃあ、次です。歩くんは、誰がいないと駄目なんですか?」

「奏とねえ…っ。」


忍さんより先に私が出てきたことが嬉しくて、つい、感情を抑えることができずに歩の足の上にお邪魔してしまいました。腕と脚を歩くんに絡めて、絶対に逃げられないようにします。


「んっ。最後です。歩くんは、今、幸せですか?」

「…!」


歩くんのはっとした顔は、すぐにいつもの…いつも以上の優しい顔になりました。


「僕は幸せだよ。」


ほぼ0距離の笑顔が直撃して、頬が熱くなるのを感じますが、最後まで私のできることをします。


「私も歩くんのおかげで幸せなんですから。歩くんは他人を不幸にする人なんかじゃないで、んっ…」


最後は歩くんから求められて、私も歩くんに体を委ねます。

何度も何度も求められて、それに答える形で唇を重ねて、何度したか分からなくなったくらいで、ようやく歩くんは私の唇を離してくれました。


「はぁ、はぁ。忍さんと、未来さんに、歩くんの機嫌の直しかたを聞かれたら、困っちゃいますね。」

「可愛い彼女がキスで直した…って奏?」


歩くんは目をあわせて『可愛い』なんて言うので、頬が熱いのを隠すために、歩くんに引っ付きます。


「も、もう。そういうのは、ずるいです…」

「はいはい。でも、ホントに奏は可愛いよ。」

「…ありがとうございます。」


歩くんに引っ付き続けていると、歩くんは私を撫でながら、私に感謝の言葉を綴るので、長い間目を合わせられませんでした。

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