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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第五章 夏休み
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第107話 昔ながらの一人用ゲーム

 ゲーム開始から約三十分。奏はまだ1ステージ目すらクリアできていなかった。

というか、1ステージ目のボス戦までもたどり着いていない。

 このゲームでは、敵や敵の攻撃に一度でも当たると、即死亡というなかなか鬼畜なゲームなのだが、フォースと呼ばれる球体がある。

フォースは自機から切り離したり、機体の前か後ろに引っ付けることができる。

 そして、そのフォースは敵と敵の攻撃を吸収できる(ただし、敵の攻撃が強すぎると吸収できない)ので、どれだけそれをうまく使いこなせるかというところだ。


「歩くん…お手本を見せてほしいです…。」


さすがに難しすぎたらしく、奏は涙目で僕を見る。


「はいはい。ほら、コントローラー貸して。」


素直にコントローラーを渡した奏は画面に集中して、猫たちと一緒に僕の操作を見ていた。

難なく奏が一番進んだところをクリアすると、奏は僕の腕に引っ付く。


「私が抜けられなかったところをいとも簡単に…、さすがです…!」

「僕も何回か全ステージクリアはしてるし、ある程度は覚えてるっていうか…まあ、慣れじゃないかな?」


そうこうしているうちに、1ステージ目をクリアしてしまった。

そのまま2ステージ目に入ったので、奏にやるかどうか聞いてみたのだが、見る方が楽しいらしい。



 それ以降、奏は見ているだけだったので、僕が全て攻略していた。

そうして、何度かやられながらも最後のボスまでたどり着いた。奏と交代してから約三十分程だろう。


「ようやくラスボスだぁ…」

「なんでこういうゲームのボスって、気持ち悪い敵ばっかりなんでしょうか…?」


言われてみれば、昔ながらのゲームのボスはもともと気持ち悪い敵か、形態変化して気持ち悪くなるような敵ばかりだ。

気持ち悪い方が、敵と判断しやすいからだろうか?


「あ、フォースが…」


フォースが敵の(コア)に入ったのを見て、奏は驚いていた。

昔、僕はこの後に何回もやられていたので、見飽きたといえば見飽きたのかもしれない。


「ここから難しいんだよね…」

「歩くんなら大丈夫ですよ。」

「そうかな?」

「そうですよ。」


なぜかやる気が出てきた。頑張ろう。

ラストのここは時間まで耐えれば勝ちなので、機体を左右に移動させてよければいいだけなのだが、敵が多い。

 敵を倒す手段として、波動砲という、いわばビーム砲に、ミサイルがある。

どちらも機体よりも前にしか攻撃できないので、上下と後ろからの攻撃は避けるしかない。

 当たり前だが、ラスボス戦の後半では、敵は上下からしか来ない。

そして、頼りになるフォースは無い。ミサイルと波動砲だけで、上下から来る敵を避けなければならないのだ。


「相変わらず、運に近いな…!」

「…!」


パーセントを確認するも、まだ38.9%で、三分の一程しか終わっていない。このパーセントが100%になるとクリアだ。

 画面に集中していると、奏が隣から「あと半分です!」と状況を教えてくれる。


「あと、半分…!」


必死に回避に専念して、どうにか敵に当たることはない。この敵の攻撃が体当たり以外だったら、すでにやり直しなのだろう。


「あと10%です!」


長い間画面を見続けていたので、久しぶりのプレイに目が痛くなってくる。


「もうすぐ終わりま…」

「あっ!?」


敵に衝突しかけて下入力を入れて、衝突したと思ったところで、パーセントが100%になり、ムービーへと変わる。


「…く、クリアしたよ!奏!」

「すごいです!」

「うわっ!」


奏にいきなり抱きつかれて後ろに倒れると、周りにいた猫たちは、すぐに移動して下敷きにはならなかったらしく、やれやれと言ったように少し離れたところから見守っていた。



 コントローラーを床に置いて、奏の背中に手をまわしたところで、襖が大きく開いた。

未来さんは僕らを見るなり、早口で話し始めた。


「…申し訳ありません。準備ができ次第、お声がけ…」

「だ、大丈夫です!大丈夫ですから!」


咄嗟に奏が僕の上から離れて、未来さんに弁明している間に、エンディングが流れているゲームを終了して、本体の電源を切った。


「歩様、奏様。本当に申し訳ありません。」

「未来さんは僕らを呼びにきただけだし…」

「ですが、ノックもせずに入ってしまった私に非があります。」


未来さんに今度から気を付ければいいと許したのだが、まだ少し落ち込んでいるように見えた。


「ほ、本当に大丈夫だから、そんなに落ち込まないで、未来さん。」

「歩様を心配させる訳にはいきませんね。分かりました。今後は気を付けます。では、ご案内致します。」


未来さんについていっている間、今度は奏の機嫌が悪そうだったのだが、きっと気のせいだろう。



 半年前に見た大きなテーブルに姉さんとおじいちゃんとおばあちゃんが待っていて、僕と奏が席につくと、知らないメイドさんが二人、奥から現れた。


「はじめまして、歩様、奏様。ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません。私、遠山(とおやま)一夏(いちか)と申します。こちらは私の妹の遠山(とおやま)春奈(はるな)です。」

「遠山春奈です。よろしくお願いします。」

「「よろしくお願いします。」」


一夏さんと春奈さんに挨拶をすると、三人のメイドさんが席につき、晩ごはんが始まった。

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