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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第五章 夏休み
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第101話 彼女の両親

 玄関の扉を開けると、ここ数日は見なかった靴が置いてあった。

玄関を開ける音で分かったのか、零さんがリビングから顔を出した。


「おかえり。歩くん、奏。」

「お久しぶりです。零さん。」


奥から姉さんの声で「零さん、来たばっかりなのに…」と聞こえ、零さんは破顔していた。



 手洗いをしっかりとしてから零さんと雫さんに麦茶を出す。


「わざわざごめんね。二人も帰ってきたばっかりなのに。」

「大丈夫ですよ。それより、予定より早かったですね。」


その質問を予想していたらしく、「あぁ…」と一息ついてから、なぜ早く来てしまったのかを説明してくれた。

 理由は大体予想していた通りで、雫さんが「混んでたら遅れちゃうから…」ということで、早めに家を出たのはいいものの、道中は混んでおらず、家を早く出た分、早く着いてしまったらしい。

 発言者の横でにこやかにしている雫さんに視線が集まると、雫さんは首をかしげるだけだった。



 文化祭がどうだったとか、進展はあったのかなど、いろいろ聞かれたが、奏は包み隠さずすべて言うので、聞いているこちらが恥ずかしくなってきて、お昼ごはんを作ると言って逃げ出すと、奏はお手伝いをすると言ってついてきた。

 料理前に手を洗い、野菜の下処理を始めると、奏がずっとこちらを見ていることに気がついた。


「どうしたの?」

「歩くん、逃げましたよね。」

「いや、それは奏が何でも言うから…」


僕の反論に奏は「なんで駄目なんですか?」と不思議そうに言う。


「お父さんとお母さんなら、言っても大丈夫じゃないですか?」

「う~ん。何て言うんだろう。…秘密にしておきたい、とか?」


僕の答えに奏は「なるほど?」と分かっていなさそうな反応をする。

(もう少し実例を出した方がいいだろうか…?)


「じゃあ、奏が今日の散歩で恥ずかしそ…」

「ま、待ってください!分かりました!分かりましたから!」


どうやら僕の言いたいことを分かってくれたらしい。

同時に、奏の機嫌を直すというミッションを作ってしまった。


「…見てたんですか。」

「夕方じゃないのに、赤かったし…」

「…!」


奏の頬は散歩をしていたときよりも赤くなっている気がするが、ミッションをさらに難題にしたくはないので、機嫌を取ろうとしたのだが、うまく機嫌を取ることはできなかった。



 歩くんと奏が料理を作りに逃げてから約1分、雫と忍ちゃんと一緒に二人についての雑談で盛り上がっていた。


「歩くんも奏も、嘘つくのは下手だよね。」

「あはは。弟くんは嘘をつくのに抵抗があるというか…、まあ、いろいろありました。」


忍ちゃんが言う『いろいろ』の意味は多分僕が考えているのと同じなのだろう。

この話題を続けていると、雫が余計なことを言う気がして話題を変える。


「ところで、忍ちゃん。明日のいつ頃にここを出るんだい?僕らはそれに合わせるから、先に教えてくれるとありがたいんだけど…」


忍ちゃんは少し考えてから、「お昼ごはんを食べてから、でいいですか?」と提案してくれるので、快く了承する。


「それじゃあ、明日のお昼までには準備しておいてね?」

「はい。ありがとうございます。」

「いやいや、こちらこそ。」


忍ちゃんはキッチンに二人を手伝いに行ってしまい、雫と二人になる。

雫は席を立ち、真っ直ぐに歩くんと奏が寝ていた部屋に近づく。


「ねえねえれーくん、この部屋、気にならない?」

「…バレない程度にね。」

「分かってます。じゃあ、失礼して…?」


雫は扉を開けると、そのまま固まってしまう。

そんなに部屋の中の状態が良くなかったのかと思い、部屋を覗くと、綺麗に整頓されている部屋を視界に捉える。


「歩くんも奏も、私たちが来るから綺麗に片付けたのかしら?」

「う~ん。いつも綺麗にしている感じがするけどなぁ。本当に気になるなら、明日の朝にでも『お部屋チェック』として覗いてみたらどうだい?」


僕の意見に「そうね。」と納得したようで、部屋の扉を静かに閉める。

 その後、お風呂やキッチンも覗いてみたのはいいものの、ちゃんと掃除しているようで、どこも清潔に保たれていた。

キッチンに寄った際に、『お部屋チェック』のことを話すと、歩くんは、「今ですか?」と聞いてくる。


「今でもいいけど、ちゃんと整頓してる?」

「ちょっと自信ないですね。」

「まあ、抜き打ちということで。(…あれで自信ないんだ。僕も見習うべきかなぁ)」


奏は僕の心を読んだらしく、「週に一回くらい掃除してください。」と言われてしまう。

ここは笑顔で誤魔化そう。



 零さんと雫さんに『お部屋チェック』というものをされたはずなのだが、何も言ってこなかったということは大丈夫だったということなのだろうか。

 全員分の料理を並べて、最後に奏が座ったところで評価を聞くことにした。


「あの、零さん。『お部屋チェック』は大丈夫でしたか?」

「うん?あぁ。大丈夫だよ。どこも綺麗にしてあったし、確実に僕らの家よりは綺麗だよ。」


零さんの評価に安心をしていると、奏が「お父さんとお母さんは週に一回は掃除してください!」と先程にも聞いたようなことを今度は強めに言う。


「善処します…。」

「ごめんね、奏。私も頑張るわ…!」

「あ、お母さんはあんまり頑張らなくても…」


いつぞやに聞いた『お母さんがコンセントを挿さずに掃除機を使っていた』という話を思い出して、奏の発言に納得しながら、不思議そうにする雫さんを見ていた。

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