第100話 課題は先に終わらせるもの
夏休みが始まって、三日が経とうとしている今日、僕は机に向かう最低限の時間が終わった。
「終わったぁ~!」
「ふふっ。お疲れ様でした。はい、どうぞ。」
一足早く課題を終えていた奏は僕の前に二人分のマグカップを置き、隣に座った。
先に机の上のノートを床に置いてから、マグカップを持つ。
「今日はティースプーンの半分にしてみました。どうぞ。飲んでください。」
奏の説明を聞いてから一口飲むと、温かく、甘過ぎない味が口の中に広がる。
「…美味しい。」
ただ、その一言でしか言い表せないような、僕にとってちょうどいい味付けだ。
僕の感想に奏は嬉しそうにして、奏もマグカップに口をつける。
「…美味しいですね。」
奏は「これなら私もおいしく飲めます。」と味をもう一度確認していた。
机の上に置かれたスマホをつけると、8月3日金曜日21時と表示されていた。
奏は僕の視線の先を見て、その後、すぐに僕に視線が移動する。
「明日にはお父さんとお母さんが来ますね。その後には、歩くんのおじいさんと会うんですよね?」
「その予定だね。半年ぶりだな。おじいちゃんに会うの。」
最後に会ったのは4月の終わりくらいだし、おじいちゃんの家に行くのは去年の夏以来だろう。
いろいろ助かったことがあったので、本当に頭が上がらない。
「私、ちょっと眠くなってきました。」
「なら、もう寝る?」
僕の問いに奏はこくりと頷いたので、奏を立たせようとしたら、奏は両手を広げた。
「…抱っこ、して?」
「…二日連続ですよ奏さん?」
「いいの。抱っこ。」
奏は本当に眠いときは敬語ではなくなるようで、そのことに気づいたのは昨日のことだ。
眠いときに無理をさせるわけにもいかないので、昨日と同じようにお姫様抱っこで奏を持ち上げる。
持ち上げられた奏がソファーで寝ている姉さんを見て、思っていたことを口にした。
「やっぱり、自分で行きます…!」
「そう言うと思いました。」
奏をソファーに下ろすと、奏は足早にマグカップを持ってキッチンに逃げていく。
本当に昨日と同じ行動をしていることに笑みを浮かべてしまったらしく、奏に「…ばか。」と言われた。
奏の機嫌を取るために、僕もマグカップを持ってキッチンに行く。
結局、奏が眠くなってしまい、機嫌を取る必要もなく一緒に寝れていた。
次の日、起きたら奏にほっぺをさわられていた。
ここまで真剣な顔の奏は見たことがなく、少し放置してみることにした。
…ほっぺをさわられ始めてから数分が経った頃、奏にほっぺを横に引っ張られて、「いひゃいれす…」と主張すると、奏はようやく僕が起きたことに気づいたようで、慌てて僕の横に転がって寝たふりをする。
「奏さん?起きてますよね?」
「す、すぅ…」
あくまでも寝たふりを続けるらしく、奏のほっぺに触れると、「んに…」と声を漏らしていた。
もちもちなほっぺを堪能して、その後自分のほっぺをさわってみる。
「奏の方がもちもちじゃない?」
「にゃんと!?」
奏は比べられるとは思っていなかったらしく、分かりやすく驚いていた。
「そ、そんなわけ…歩くんのほうが、ほうが…」
僕のほっぺをさわった後、奏自身のほっぺもさわると、奏の声のボリュームはだんだん小さくなっていく。
「もしかして私、ふ、太った…?」
「そんなこともあろうかとこちらに体重計が!」
「うわっ!?」
「ひゃ!?」
姉さんの突然の乱入があり、普段出さないような声が出て、自分でもびっくりした。
姉さんは「ごめんごめん」と言いながら体重計を床に置いて奏を呼び、奏はベッドから降りる。
「ちゃんと測れるようになったら乗るんだよ?」
「分かってますよ。子供じゃないんですから…」
姉さんが体重計の電源をつけ、少ししてから奏が乗る。
ピピッという音がしたので測れたはずなのだが、奏が体重計の上から離れようとしない。
奏の名前を呼んでみるが、反応がなく、体重計の上で立ち尽くしている。
仕方ないので奏に近づくと、奏は素早く体重計から降りて、体重計の電源を切った。
「…運動、しましょう…?」
「そ、そうだね。でも、僕も測っていい?」
「…あ。消しちゃいました…」
奏がもう一度体重計の電源をつけると、前回の記録は表示されなかったので、奏はほっと胸を撫で下ろしていた。
体重計が測れる状態になり、体重計に乗ると、すぐに記録が表示される。
「『45.3』キロです。」
「春から0.1キロも変わってない…」
「歩くんはもっと食べましょう?」
奏にごもっともなことを言われ、「そうします」としか返せなかった。
明日からのお出かけの準備をした後、特にすることもなかったので、奏と散歩することにした。
今日は学校までではなく、もう少し距離を稼げるルートだ。今は4分の3ほど来たところだろうか。
そして、分かったのは、夏場は予想より暑かったということだ。
「さすがに暑いね。奏は大丈夫?」
声をかけると、わざわざ日傘を傾けて顔を見せてから、「はい。大丈夫ですよ。」と笑顔を見せる。
「歩くんが『日傘を持っていった方がいい』って教えてくれたから…。というか、歩くんこそ帽子だけで大丈夫ですか?」
奏は僕の帽子の鍔をツンと押し上げながら聞く。
「うん。大丈夫。だけど、次からは夕方くらいに行こうか。」
「そうですね。」
奏は僕が帽子をかぶり直すのを見てから顔を日傘で隠して、代わりに手が伸びて僕の手を掴む。
横目で奏を見るが、傘で目元までは見えなかったが、頬が赤くなっているのが見えた。
そこを指摘したら機嫌を損ねると確信して、マンションに帰るまでは手をつないだまま帰ることにした。
2025共通テストを教授から貰い、解いていて時間が確保できませんでした。本当にすみません。
情報という教科が増えて今時の高校生は大変ですね。
受験生の方々が見ているのかは分かりませんが、最後まで頑張ってください。




