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魚屋の最後

作者: 直貴

 山間の町に小さな魚屋があった。この店は店主の祖父の代から続いており、今は3代目が切り盛りをしている。

 この町には他にもう一つ魚屋があったが去年急に閉業し、この店が町で唯一の魚屋となった。スーパーなどの大型小売店がなく、魚を買うにはこの店に来るしかなかった。店にはいつもたくさんの客が訪れ繁盛していた。

 ある日、店主は新聞で食品ロス削減の内容の記事を目にした。一年程前から始まった廃棄する食材を減らし無駄をなくすという活動であるが、実際に取り組んでいる店はこの町では店主の知る限り1軒もなかった。

 店主は先手を打ち、食品ロス削減として、閉店間際に廃棄寸前の刺身を9割引きで販売し、食品ロスを減らそうとした。その日から、9割引を見た客はまるで宝を見つけたかのような顔をして刺身を選び買っていった。以前は廃棄していた刺身をお金を貰い処分できるのでこの戦略は成功のように思えた。しかし、次第に客たちはパターンを掴み始め、消費期限ギリギリになるまで待つことが通例となった。

 ある晩、店主はカウンターの奥で計算書に額を押し付けながらため息をついた。ほぼ全てが9割引きで売れ、収益が急激に悪化していた。店主はこの9割引の制度をすぐに廃止した。しかし、客たちはまだ値引きを狙い昼頃に店に足を運ぼうとせず、店主は昼に売れ残った刺身を廃棄せざるを得なくなった。店は赤字続きであったため、店主は悩んだ末に魚の仕入れを全て止め、全ての商品を2割引で売った。品は飛ぶように売れ、その数日間だけは黒字となった。それからこの町の住人は魚を食べることはできなくなった。

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