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第11話 ラストタイム到来です 今日も講義はサボります【完】

「ねえねえ愛ちゃん、ここの相合傘の片方に名前書くだけでいいからさ」

「じゃ代わりに令嬢アイ・アイガサでも書いてあげます」

「それは小説の……ってラブレター読んでたの!?」


 私は相笠愛、私の名前を弄ぶかのように相合傘のイラストを押し付けてくる隣の男は幼なじみの笠原蓮です。


 蓮は私と付き合い始めるや否や、私に愛の告白という名のイタズラを毎日しつこくしてきます。私達が付き合い始めたという事実は周りに瞬く間に浸透し、私はもううんざり度百億パーセントです。


 ただそんな私の周りをカバディするかの如く張り付く蓮に、合法的に仕返し出来るイベントがあるんです。それが。


「ぅ……久々に眠気が……愛ちゃんよろしく頼んます……」


 突然金縛りに合うイベントです!


 お決まりのセリフを言い残し長机に倒れ突っ伏し始めた蓮。いつも通り寝始めた蓮はいつも通り目を見開いたままのはずです。

 つまり現在蓮は金縛り中、これに蓮はイタズラして構って欲しいと私に毎回頼む訳です。


 この原因はもちろん私にあるのですが……


 まあそんな事はどうでもいいんです。ここから私のご褒美タイム、発散出来ずにいたムラ……モヤモヤを晴らす時がきたのです。


 はあ、はあ、あ、ついヨダレが……

 別に彼氏が意識を保ったまま絶対に身動きが取れない状況下に置かれているこのご褒美タイムに、ムラムラしている訳では無いです。本当です。


 蓮の服を捲し上げ元カレ(腹筋)をくすぐるったり、塩とかスライムとかねるねるねるねをぶっかけて来ましたが、今回はその比じゃありません。


 待ちに待ったご褒美タイムはASMRです!

 妹に余ったスライムをあげるも断固拒否された、哀れなスライムによるねちょねちょ音地獄を味わうがいいですよ!


 ……あれれ~おっかしいです~。

 バックに入れておいたスライムがありません。

 あ、そういえば今日も今日とて蓮と大学に登校中。


「愛ちゃん見てあれ、珍しく増野さんが同じ時間帯で登校してるんだけど」

「そんな訳無いです、増野さんの家は反対方向に……あ、本当ですね、あのマスコットオーラは間違いなく増野さんです。蓮、ちょうどバックにスライムを入れていたんです。私達であの野生のマスコットを可愛がってあげましょう」


 私はなんて事を~。

 スライム二刀流で耳を両側から攻める作戦を増野さんに壊されてしまっていたなんて~。


 蓮をねちょまくって悶える姿を堪能する予定が崩壊してしまいます。ああ、金縛り解放後、息を荒らげながら涙目でやめてやめてと懇願する蓮を見るはずが……しかし決定事項ですので予定通りするしかありません。


 蓮の彼女である私のプライドに掛けてASMR作戦を続行します!

 もちろん私のし。


「あああダメですよ相笠さん! それは生々しすぎます! R15を超えてしまいますぅ!」

「これは仕方ないのです増野さん。スライムが無いのであれば私のし」

「わああああダメですダメですぅ!」


 決して蓮の無防備な耳を犯し放題だなんて微塵も思って……あ、またヨダレが、危ない危ない。


 まずはワタワタの綿棒で耳の手入れから。


 刺激が強すぎない様慎重に綿棒をこしこししながら、スマホのライトで照らしましょうか。この方が蓮のお耳が見やすくなりますし。


 ───ビクッ


「うっ少し痛い……」

「あ、ごめんごめん」

「今笠原さんの声がしましたけど!?」

「ふぅ、バレるところでした」

「バレてますよぉ! 笠原さん確信犯ですよぉ!」

「食堂パンあげますから」

「有難く貰いますけど!」

「おまけにうさちゃん落書き集もついてきます」

「有難くありません!」


 そんな私達の前の席でパクチーを食らう美少年亀石さんが、手提げ袋からパクチーを取り出して言います。


「パクチーでASMRすればいいですよ」


 私は首を横にフリフリ。


「私今パクチー食べたくない気分なんです」

「いや咀嚼音の方じゃなくてパクチーを耳に……」

「「物理的に!?」」


 物理パクチーは置いといて、やはりここは予定通りにしますか。

 綺麗になった蓮の耳に顔を近づける私を必死になって止める増野さん。もう一度朝のようにスライムを背中にねちょりましょうか?


「先生も何とか言ってくださいよぉ」


 先生はパサパサメロンパンをパサパサ食べながら。


「今講義じゃなくて昼休憩中なんだからバカップルに好きにさせていいじゃないか。どうせ講義だとしても相笠はサボるし」

「そういえばそうでした! 久しぶりの金縛りで講義中だとつい……まあこの金縛り演技ですけどぉ!」


 バカップル呼ばわりさるのも飽き飽きですね。それにモールス信号をようやく覚えた私をバカにしてはいけませんよ、講義中蓮と目をパチクリさせて会話出来るんですから。


 あ、都合よく視線の先にいたダジャレ好きの及川さんと目が合いました。私は目を高速パチクリし。

『フ』『ツ』『キ』『ン』『フ』『キ』『ン』『デ』『フ』『キ』『フ』『キ』


 ニカッと笑顔な及川さんも同じく高速パチクリ。

『ナ』『ン』『テ』『セ』『ン』『ス』『ノ』『ー』『ベ』『ル』『シ』『ヨ』『ウ』『マ』『チ』『ガ』『イ』『ナ』『シ』


「普通に会話してくださいよぉ!」

「使えると使いたくなっちゃうんです」


 私はモールス信号で疲労した目を休める為、斜め上を見上げると時計が視界に。ふんふん、次の講義まであと一分ってところですか。私は先程食堂パンとお弁当を交互に食べていたので、時間差でピキーンと閃きます。


 亀石さんがくれた物理パクチーを口に咥えて、放置プレイ中の模倣金縛り君を起こします。


「ああ、そろそろ講義か……って愛ちゃんこれって」

「そうれふよ」

「パクチー口に入れすぎじゃない?」


 パクチーの味に大分慣れてしまった亀石パクチー信者になりかけていた私は、モグモグとパクチーを食べ量を減らしまして。


「これであの時のリベンジマッチですよ蓮」

「良し愛ちゃん、今度こ」

「講義始めるぞー」


 と蓮の決めゼリフを遮るように先生が始めるぞコールしてしまいました。全て計画通り、私はパクチーを全てペロリしてふふっと笑ってやります。


「あ~残念でしたね蓮、時間切れですよ」


 そんな私に気にもとめず蓮は私に口を寄せ───


「……不意打ちは卑怯です、時間切れでしたのに」

「パクチーの味、あの時と同じ味がするんだけど」


 あの時……病院の一室、私の隣で眠る金縛り君を起こす為にキスしたやつですね。


「あれは正確にはねるねる腹筋パクチーですよ、蓮のファーストは面白い味で良かったですね」

「逆に愛ちゃんはどうだったのよ」

「私のファーストはあれじゃないですよ」

「ええ!? だだ、誰と!?」


 驚く蓮にチッチッチと指を横に振ってあげます。


「私は元カレと塩味のファーストをしたのですよ、妬ましいですか?」

「……俺の腹筋ってカウントされるの? ここでもBSSしなくていいのに……」

「ふふふっそれは良かったです」

「講義が始まったんですからイチャイチャしないでくださいよぉ」


 頬を膨らませて睨む増野さん。睨みつける増野さんも見慣れてきましたね、可愛らしいマスコット兼お友達です。


「お前らが愛してやまないテストタイムだぞー」

「「……あ」」


 私とした事が完全に忘れてましたッ!

 せめて、以前パシャったホワイトボードの文を今から暗記しなければ……!


「やば、俺も復習し忘れたわ」

「蓮が勉強しないなんてあるんですね、明日は嵐を呼ぶ疾風伝ですね」

「いやー明後日行く水族館デートが楽しみで、へへ……ぅ」

「う?」

「マジに眠気が……愛ちゃんよろしく頼んます……」


 ……テストの現実逃避で金縛りですか!?

 いくらなんでもピンチですよ!


「あースマン手違いだった、明日テストだから勉強しとくようにー。じゃいつも通り出席簿取るぞー」


 あ、良かったですね蓮。これでテストで眠らずに受けられますよ!

 出席簿は以前と同じようにすれば……あ。

 私は念の為蓮の横顔を確認。目はちゃんとかっぴらいていますね、良し良しです。


「相笠愛ー」

「はい、あ、先生一ついいですか?」

「どうぞ?」


 私は己の恋心に、蓮に、正直に言うと誓った身。出席簿くらい正直に告白しましょう。


「蓮もお決まりで金縛りになりましたし、今日も講義はサボります」

「相笠さんいくらなんでも正直すぎますよぉ!」


 私と蓮は、今日も明日も、たとえ関係性が多少なりとも変わっても。相笠愛と笠原蓮、イラストの相合傘に書かれたような、代わりのない関係です。


 さて、今日はどんなイタズラをしましょうか。




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