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第10話 ご奉仕タイム到来です 案の定講義はサボります 後編

 私はゆっくりと顔を上げ、眠ったままの蓮の顔を見上げる。


 ……寝ている蓮にしてしまいました。


 しかし、私に残された手段はイタズラしかないのです。もう一度蓮と……


 再度至近距離まで近づき、蓮の鼻と私の鼻が触れ合うところまで来た時。


 私の瞳と蓮の瞳が合った。


「うひゃああ!!!」


 あああ、ああえ!?

 今蓮の目開いてました!?


 飛び退いて焦る私に応えるように、蓮がムクっと起き上がり。


「お、おはようございます」

「……! 蓮ッ! 蓮ー!!!」

「おあッ! ……心配かけてごめんよ愛ちゃん」

「私、別に、心配なんかしてませんもん!」


 蓮の胸で顔を埋めて泣く私。

 さっきまで私が看病していたはずなのに、蓮が私の面倒を見ている様。

 このまま起きなければどうしようとか、私は全然……全然。


「……心配してましたよ」

「……愛ちゃん?」

「私ッ蓮のこと心配してたんですよッ! 起きなかったらどうしよって……良かった、良かったです……」


 私は誓ったんです、逃げずに己の恋心に正直になると。

 だから全てを話しましょう。きっと蓮なら大丈夫、私の気持ちを受け取ってくれるはずです。


「私、私……」

「大丈夫大丈夫、俺も心配する愛ちゃんをずっと聞いてたから」

「……え? 聞いてた?」

「あっ」


 目を逸らす蓮に私は静かに問いかける。


「聞いてたって……何処から聞いてたんですか?」

「……この病室に運び込まれた時、金縛りに合って動けないままずっと……最後ので解放されたけど」

「さッ……目閉じてましたよ」

「金縛り中目も開けられない時ってあるじゃん?」


 わわ、わわわわわあああ!!!

 私の一言一句全て丸聞こえってことですか!!?

 それにキスまで!!?

 ダメ、ダメですッ蓮の顔をまともに見れません!!!


「その……俺、凄く嬉しくて……逆にいつ言うか、言わないままの方が良いのか迷っちゃってて」

「言っちゃいましたよ!」


 はははと笑う蓮は、気を取り直したかのように私の両手を握り。


「改めて言おう! 俺は愛ちゃんが好きだ! 付き合ってください!」

「……わ、わわわ、私も……蓮のことがすす……好きです……」

「愛ちゃんの優しさ、笑顔、傍に居るだけで幸せなんだ!」

「ふえ!? あ、私は、蓮のその、元気なとことか、表情とか、腹筋とか、可愛いとことか、腹筋とか腹筋……」

「愛ちゃん」

「へわわわッれ、蓮ッ……」


 私達はお互い瞼を閉じ顔を近づけ……


「あのーそろそろいいかね……」


 診断書を持った医者が申し訳なさそうにドアから顔を覗かせていました。


 私と蓮はお互いに身体ごと向きをグルンと回し、頭を深々と下げて言います。


「「す、すみませんでした!!」」

「いやーこちらこそごめんねえ、今言わないとこのままおっぱじめそうだったからつい」

「「お、おっぱじめる!!?」」


 お医者さんがコイコイッっと手招き。

 私達は気まずい空気の中、お互いに目を合わせられずモジモジしながら診察室に行くことになりました。





 ◇◆◇





 目覚めた蓮を連れ、私達は改めて診察を受けることになりました。私と蓮のこれまでの詳細を聞いたお医者さんはなるほどなるほどと相槌をしながら。


「えー……これはあれだね、予想通りだね」


 この謎の金縛りの正体を言い放ちました。


「恋の病だね」

「「恋の病!?」」


 こいって……恋ですか?

 金縛りの原因が恋って結びつくものなのですか!?


「はは、これ一回言ってみたかったんだよね。ラブコメ漫画で読んで」

「「いいから教えてください!!」」

「まあまあ落ち着いて」


 お医者さんはコホンと咳払い。


「笠原さん、初めて講義中金縛りに合った時も相笠さんにイタズラされたんだね?」

「はい、されましたけど……」

「恐らく君はそれが嬉しかったんだねえ」

「うッ嬉しい!?」


 驚愕と恥の掛合わせでプルプル震える可哀想な蓮。この顔を写真に撮って豪華な額縁に入れて飾りたいですね。


 それにしても私にイタズラされるのが嬉しいだなんて……蓮はドMだったんですね。

 これからは金縛りという免罪符を使わずにイタズラ出来そうで何よりです。


「いつも告白しても振り向いてくれない彼女が唯一振り向いてくれる瞬間、それが相笠さんがちょっかいを出してくれる講義中での金縛りだった。その初めの金縛りがきっかけになり、君の脳は金縛りイコール彼女に構って貰えると結びつけてしまったんだろうね。まあ思い込みとか、ルーティンに近いね」


 お医者さんが得意げに私達にペラペラ解説。


 ルーティン……

 ベットが寝れない場所と思い込んでしまい寝付けないとか、コップを持つ時小指をピンとあげてしまうとかそんな感じでしょうか。


「その思い込みで俺は講義の度に金縛りに合ってたってことですか?」

「そうだね、君は構ってちゃんだったんだねえ」

「「構ってちゃん!!」」


 驚愕と恥の掛合わせにさらに上乗せされた蓮は、どんな表情をすれば良いのか分からないという様な拍子抜けな顔をしています。

 私はお医者さんの前で堂々とスマホを構えて、蓮を写真に収めました。額縁案件です。


 それにしても蓮が構ってちゃんだったなんて……蓮は犬みたいなやつだったんですね。

 後で顎下とお腹を撫で撫でして……あ、腹筋も撫で撫でもふもふ出来ます!


 ふふ……まあそれは良いとして。


「蓮が最近金縛りが多くなったり、今日みたいな長時間の睡眠が起きた理由ってなんですか?」

「金縛りが増えたのは、それだけ君に構って欲しかったってことだろうね。なにか最近変わったこととか、今日寝る直前にいつもしないことをしたとか……逆に笠原さんを起こせたのもファーストキスしたからでしょう?」

「そ、それはもう……」


 限界突破した蓮は顔を手で隠して拒否ってます。


 最近変わったこと。

 ……最近私が腹筋ばかり構っていたからですね絶対。

 昨日は私が金縛りになる演技をしましたし、今日のパクチーで蓮を誘ったアレが決め手になったのでしょう。


 ……これ全部私の所為です!!!


「わ、私が犯人ですぅ……」

「いやいや、元はといえば俺が」

「まあこうして原因も分かったことだし、君達付き合えたんだから少しずつ金縛りになる回数も減るんじゃあないかな」


 私と蓮はなよなよしながらお互いを見つめ合い。


「……俺達付き合ってる?」

「う、うん、つつ付き合ってますよ?」


 こんな私達にお医者さんはやれやれとするしかないご様子。とりあえずデートしてみればとご意見を貰い、ここ病院での話は幕を閉じることになりました。

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