表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/31

余談 その後の【暗黒の使徒】

 始まりの町[バース]で繰り広げられた、トッププレイヤー達と【暗黒の使徒】による衝突から一夜が明けた。

 既に掲示板では【暗黒の使徒】の惨敗が拡散され、これまで積み上げて来た”マトモな部類のPKギルド”という印象は塗り替えられていた。評判は地に落ち、【暗黒の使徒】を酷評する声が殆どとなっている。


 そして外部だけではなく、内部でも変化が起きていた。

「ギルドを……抜けるだと」

 そう言って、ジロリと脱退を申し出たメンバーを睨むのはギルドマスターのダリルだ。その形相は怒りに満ちており、今すぐにでも掴み掛かるのではないかとすら思わせる。

 しかし、脱退を申し出たメンバー達は怯まなかった。そう、メンバー()だ。脱退を決意したのは一人や二人ではない……その数、十三人である。

「今のまま、リア充に怒りをぶつけていても得るものは何も無い……今更だが、それに気付いたんだ」

 一人がそう言うと、残る面々も頷いている。

「それに決闘に負けたのもそうだが……あんな大学生くらいの女の子に、涙ながらに説教されたんだ」

「あぁ……リア充爆発だなんだと言っていた、自分が恥ずかしい」

「俺達は足を洗う。もう、決めたんだ」


 そんな彼等の言葉を聞いて、ダリルだけではなくビスマルク達も声を荒げる。

「正気か、お前達! お前達のリア充に対する怒りは、その程度のものだったのか!」

「第一、ギルドを抜けてもアンタ達がやって来た事は変わらないわよ!」

「転生でもする気か!? これまでの時間を全て、ドブに捨てる事になるぞ!」

 凄んで翻意を促す面々だが、脱退希望者達の意思は変わらない。

「俺達は目が覚めたんだ!! こんな無意味な事、もうやってられん!!」

「リア充に対する怒り? ミモリさんの言う通り、ただの八つ当たりだろうが!!」

「後ろ指さされようが、このギルドに居るよりマシだぜ!!」

「ドブに捨ててんのはむしろ、今までの事だろうが!!」


 更に様子を窺っていた他のメンバーの中から、一人が脱退者達の方へと歩み寄った。

「お前等の、言う通りだな……こんな事続けていても、ただ虚しいだけだ! 俺も、一緒にギルドを抜ける!!」

 一人のメンバーがそう言うと、その流れに乗ろうと更に一人、二人と声を上げていく。その数はダリル達を上回り、勢いを増していった。

「ぐ……ぬぅ……っ!!」

 歯軋りをしながら顔を醜く歪めるダリルだが、彼等を引き留める手段が思い付かない。

 ミモリに否定され、ジン達に敗北し、鬱憤が溜まっていたところにこれだ。何もかも上手くいかず、苛立ちはついに限界を超えた。

「貴様等の様な半端者、このギルドには不要だ!! 出て行きたいならば好きにするが良いッ!!」

 怒鳴り散らしながら、ギルドマスター用のシステム・ウィンドウを開いたダリル。そのままギルド加入・脱退のタブ設定を、『要承認』から『自由』に変更してしまった。


 ダリルの発言に怒りを感じつつ、脱退希望者達はこれ幸いとギルド脱退の手続きを進めていく。

「……じゃあな」

 脱退したプレイヤー達は一言残すか、無言のままホームを出て行く。そうして次々とメンバーが脱退していき、気が付けば……

「な、なん……だと……!?」

 ……残ったギルドメンバーは、ダリルを除いて二十八人。たったの数分で、半分以下になってしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 正当性なんて最初から無いからなぁ。 このまま残っても野盗みたいなもんになりそうw
[良い点] >後ろ指さされようが、 暗黒抜けなかったらギルメンから後ろ指さされなくてもこのまま暗黒に残ったら一般プレイヤーから後ろ指さされるんですよね。あらやだこれ詰んでるwでもどうせ後ろ指さされるな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ