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8. 第二章 プロローグ
私たちは死に逝く者を「良い航海を」と言って見送る。
私たちにとって死は新たなる旅立ちだ。生きている者たちが憧れ、死した者が向かう遥かな常春の地への。
死者たちは"美しき浜辺"で船を与えられる。生前の行いに見合った船を、神の采配によって。大きな帆船だったり、古びた小舟だったり。それで大海原へ旅立つのだ。
荒波の中を行く者、凪いだ輝く海の中を流れるように進む者……。私たちはそうして生きた間の己を知る。
新しい神が入ってきて、目指す地が変化したり祈る形が変わっても、変わらず死した私たちは旅をし、そして、「良い航海を」と生ある者は見送り続けている。




