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これは『私』の通過点

ルトルヴェなその後 〜オ・ニ・ヴァ ルート~

作者: イトウ モリ
掲載日:2021/10/30

リーゼは最初からこういうキャラのつもりで考えてました。

 風が誰かに呼ばれている。


 風がその声の方に行きたいみたいで、そわそわしている。


 私は風の行きたいように行かせてあげる。


 少しずつ、私の視界は空の青から、黄色や朱などのあたたかな木々の色に変わっていった。




「お。きたきた。待ってたよ」


 やっぱりというか、なんというか。

 私を出迎えてくれたのはリーゼだった。


 リーゼは、私の格好を見て口笛を鳴らした。


「あー、風装束じゃん。

 なるほどね。よりによって風試しの日に、風に乗っかって村を脱走してきたわけかー。

 さっすがブリーズ、やることが派手だなー」


「べ、別に脱走したわけじゃ……!」


 説明しようとする私の話を聞かず、久しぶりに見るリーゼは満足そうに目を細めた。


「ふっふっふ。と、いうことは風人気(かぜにんき)は完全に村よりもこっちに()があるわけだ。

 ならば今こそ復讐のとき!! この私を追放なんてした報いを受けてもらおうじゃないの!! 風の裁きを食らわせてやるわ!!」


 リーゼのテンションに合わせて、リーゼのまわりを風がゴォーっという音を立てて巻き上がる。

 リーゼの髪がまさに、怒髪天(どはつてん)()く的な状態になっている。


「ちょっとリーゼ! 復讐ってなにいってんの! 落ちついて!」


 私を応援する風が、真上に逆立っているリーゼの髪を優しく包み込んで、そっとおろす。


「風ツッコミするなんて……やるわねブリーズ。

 そしてなんてマイルドなツッコミなの……。優しさがしみるわ……。

 あなたのその力、私の復讐のために貸してちょうだい?

 追放といえばざまあ。つまりやられたらやり返す……ぶぁい返しだ!」


「どこ見てキメ顔してんのリーゼ。

 ……本当は別に追放されたこと、なんとも思ってないんでしょ?」


 私の言葉にリーゼは、舌をちょろりと出して笑った。


「あ。やっぱり分かっちゃった?

 だってさー、村に残ってたら絶対に長にされんじゃん?

 やだよー。あんな閉鎖空間にずっと死ぬまで縛られて暮らすのなんてさー」


 私の頭の中に、恐ろしい可能性が浮かんでしまった。


「まさか……自作自演……?」


 リーゼは私の言葉に、ぷっと吹き出すと首を横に振った。


「そこまで器用じゃないよ。偶然偶然。

 まあ、ラッキーとは……思ったけどね」


「ひどい! すっごい心配したんだから!」


 けっこう本気で怒っている私に、リーゼは優しく笑いかける。


「私もブリーズが心配だったよ?

 でもさ、ブリーズが風と話してる声、聞こえたから。

 風が仲間を迎える歌も。

 ああ、こりゃもうすぐここに来るなって思ってさ」


 すごい……。

 ここは村からかなり離れてるのに、リーゼには聴こえてたんだ。

 私の声も。風の歌も。

 私が探しに来るって分かって、待っててくれたんだ……。


 胸がじんと熱くなり、私は涙が出そうになった。


「ふっふっふ。村の過激派のナンバー1とナンバー2がここにそろってしまった以上、もはや村の運命は決まったようなものよ!

 さあ! 今こそ復讐の……!」


「だから! 復讐はしないってば! 過激派扱いで浮いてたのはリーゼだけ! 私を一緒にしないで」


 出そうになってた私の涙はすぐに引っ込んだ。


「またまた奥さん、そんなこと言っちゃって。

 奥さんだって実は影でいろいろ言われてたんですぜ?」


「リーゼ……それ誰のマネ……?」


「どっちにしろ村に戻る選択肢は私にはないよ。長にはなりたくないからね。

 ブリーズはどうする? 帰ればたぶん、ブリーズが長決定だと思うけど」


 リーゼがいない村に帰るのは、考えられなかった。

 自分が長になることも。

 せっかく会えたリーゼと離ればなれになることも。


「……リーゼに、ついてく」


 リーゼは私の答えが最初からわかってたみたいに、満足そうに微笑む。


 ずるいなあ……。

 私の考えてることなんて、いつもリーゼはお見通しなんだから……。


「そ~こなくっちゃ! じゃあさっそく都にでも行ってみようか! 村の服って、すっごいダサいじゃん? どんだけ大昔のデザインよ? って感じ?

 オシャレな服、いっぱい買おうよ! え? お金? そんなの風にお願いして、見栄えのする技を披露すれば簡単に稼げるって!」


 どこまでも自信満々で我が道を行くリーゼ。


 私を連れてきてくれた風も、リーゼに会えてテンションが高くなっている。

 さっきからあたりをびゅんびゅん飛びまわって、木の葉をまき散らしていた。


 リーゼといると私は強くなれる。風もきっとそうなんだ。


「都はいいよー、いい男もたくさんいるし、女の子はみんなかわいいし、食べ物もおいしい。

 やっぱ若いうちは都会で過ごしてみないとね!」


 同い年のはずのリーゼは、なぜなのか発言が妙に年寄りくさい。


「リーゼって、もう都は見てきたの?」


 さっそく都にむけて歩きだそうとするリーゼの背中を追いかけながら、私は声をかけた。


「うんにゃ。ブリーズと一緒に行った方が楽しいと思って待ってたよ」


 当たり前のように言いきってくれる。

 私がここに来るって、信じてたって……そう言ってくれていた。


 嬉しくてまた泣きそうになった。

 泣くとリーゼに絶対笑われるから、何か話をしてごまかさなくちゃ。


「リーゼってさ、いつもそういう情報ってどこから仕入れてくるの?」


 ずっと疑問に思っていたことを、私はリーゼにたずねてみた。

 リーゼは、私の方をくるりと振り返り、いたずらっぽい笑顔を浮かべた。


「そんなの決まってるじゃん。風のうわさ、だよ」


 風が元気に私たちのまわりを踊っている。


 風たちの笑い声が、私には聞こえた。



オニヴァの意味は……どうしましょうか。

今回は言っちゃいましょうか?


答えは……Let's Go! です。

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風使いの少女~ル・ト・ル・ヴェ~ 音楽と一緒に楽しむ企画作品です。
― 新着の感想 ―
[良い点] 続きが読めて嬉しかったです。 ふたり出会えて良かった! ラストの風のうわさ 良いですね。^_^
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