8 BL
部室に微妙な空気が流れていた。
にこやかな凛乎に息を荒げている桃子……。
「あ、あの……びーえるってなんですか?」
「BLっていうのはね! 美少年……むぐっ」
「ボクの可憐な里穂を傷つけるな!」
桃子が凛乎を力ずくで押さえつける。
里穂はぽかんとしながら、その成り行きを見守る。
「BLは、今一番ホットな文芸だよ!」
「違うわっ! そんなホットさなんていらねえよ!」
「はぁ……」
里穂がわかったようなわからないような、曖昧な返事をする。
「こんなのはどうでもいいから、バイトの話を考えておいてくれ」
「だから、アタシが……んぐっ」
「お前は少し黙ってろ!」
桃子と凛乎が絡み合っている。
それを不思議そうに、里穂が見ていた。
「文章の仕事だからやっておいた方がいい」
「はい……でも、お父さんとお母さんに聞いてみないと……」
「物語を書く仕事だよ。大丈夫」
「先輩! アタシにもやらせてくださいよ!」
桃子と凛乎の視線がぶつかる。
にこやかな凛乎に嫌そうな顔の桃子という図式だ。
「常識と協調性のある人間じゃないとだめだ」
「アタシ、常識と協調性抜群!」
「常識のある人間が入部していきなりBLもってこねーよ!」