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7 傑作
里穂と桃子が振り返ると、そこに立っていたのはセミロングの生意気そうな顔をした女生徒だった。
見ようによっては愛嬌のある顔に見えなくもない。
「先輩! 今年入部するプロ志望の文芸部員ならここにもいますぜ!!!」
「誰?」
桃子は、態度も表情も言葉も素っ気ない。
「よくぞ聞いてくれました! アタシこそは文芸の申し子! いや神の子と言っても過言ではない逸材! その名も伊藤凛乎です!」
「ふーん」
「…………」
里穂は成り行きについて行けずに、ぼんやりと凛乎を眺めているだけだ。
「早速これをどうぞ!」
「いや、いい」
「感動したときにはこのティッシュを使ってくれればいいですから!」
「いや、別にいらないから」
「そうですか!!!! なら是非あたしの作品を読んでください!!」
「いや、人の話を聞け」
「ここなんか傑作ですよ! いや、純文読む人にはすすめられないですけど!」
「…………」
桃子はすごいやる気のない顔をしながら、嫌そうに原稿を受け取り、ため息をつきながらページをめくった。
「BLじゃねーか!」