6 転機
桃子が、一枚、二枚と里穂の書いた原稿をめくっていく。
どれくらい時間が経っただろうか。
その緊張に耐えきれないように、里穂が桃子に声をかけた。
「ど、どうでしょうか……」
「…………」
今朝の様子とはうってかわり、桃子は真面目に原稿に目を通している。
「あ、あの……」
「キミ、将来はプロになりたいの?」
「え、あ、え……?」
「なにか文章の仕事をしたいと思っているの? それとも趣味?」
そこまで深く考えたことのない里穂は思わず悩んでしまった。
やはりプロになりたいのなら、厳しい感想が待っているんだと思う。
趣味にとどめておくののなら、馴れ合い的な感想をくれるのだろうか……。
「プ、プロとか……そんな……」
「いや、気持ちの問題としてどうなの?」
「…………」
「…………」
「な、なりたいです!」
里穂は漠然と小説を書きたいとは思っていたが、プロを視野に入れてはいなかった。
しかし、いざ問われると……目指してみたい気持ちに駆られる。
「これ、どのくらいの時間で書いたもの?」
「一ヶ月くらいです……」
「ふーん……手は早いんだね……」
「はぁ……」
「いいバイトがあるんだけどやってみない?」
「バ、バイトですか……?」
「ちょっとまったーーーー!」
「ん?」
「え?」
そこに、誰だか知らない人が割って入った。