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5 性格
「入部試験というわけじゃないけど、なにか作品は持ってきたかい?」
「は、はい……」
どうやら、この桃子という先輩が文芸部の中で主導的な立場にいるらしい。
部長なのだろうか。
入部希望の里穂に、積極的に関わってくる。
他の部員はそれを遠巻きに眺めているだけだ。
「じゃあそれを見せてくれないか?」
里穂は今までに書きためていた原稿の中で、自信のあるものをいくつかピックアップして持参していた。
学生鞄の中からいそいそと原稿を取り出す。
「あの……これですけど……」
「手書きか……パソコンは持ってないのかい?」
「入学祝いに買ってもらったばっかりで……」
「そう……でも、きれいな字だね。ボクの好みだよ」
「あ、ありがとうございます……」
里穂はなんともいえない感覚に、ぶるっと身体を震わせた。
桃子の言葉には、今まで感じたことのない色気を感じる。
「あと、キミの血液型はA型かな?」
「やっぱり……わかりますか?」
「うん、この細かい字がびっちりつまった原稿用紙をみれば誰でもわかると思うよ」
「…………」
何も言えない里穂だった。