4 文芸部
入学式が終わり、新しいクラスで自己紹介も済ませた里穂は、放課後になって文芸部の部室を訪ねていた。
色々な部活の勧誘が始まっていたが、里穂は高校生活の三年間を文芸部で過ごすと決めていたのだ。
文芸部と書かれた部室の前で、緊張を押さえながら扉をノックする。
「し、失礼します」
横開きのドアを開けると、部屋にいた四、五人の部員が一斉に里穂を見た。
「あ、あの……一年の沖田里穂と言います、その……入部希望なんですが……」
「やあ、キミは今朝の娘だね」
「え? ああっ……」
親しげに話しかけてきたのは、今朝里穂の身体をべたべたと触ってきた桃子という先輩だった。
桃子の手が身体を這う感触を思い出し、里穂は思わずゾワゾワしてしまう。
「キミは文芸部志望だったのか」
「ち、違います……」
「え?」
どうして桃子がこの部屋……つまり文芸部の部室にいるのか。
一番しっくり来る答えは、桃子が文芸部員だからだ。
「ん? 違うのかい?」
「ち、違くありません……」
「じゃあ、文芸部に入部希望するんだね?」
「ち、違います……」
「はぁ?」
『ああああぁぁぁあぁぁ。もうわけわかんないぃ……』