39 里穂の企画
「じゃあ、次は里穂。用意はいい?」
「は、はい……」
里穂は立ち上がると、深呼吸をして気持ちを落ち着けた。
結果はどうあれ、頑張って伝える努力をしなければいけない。
「えと……コンセプトは童話です」
「中世くらいの時代、牧歌的な雰囲気の世界で紡がれるストーリーです」
「主人公の少年は人形の造形師をしています」
「そして、作られた人形のひとつに命が宿るんです」
「その人形は女の子の人形なんですが、わがままで、いじっぱりで、主人公に迷惑をかけてばかりいるんですが、主人公はこの人形を人間にしてあげたいと思うんです」
それは企画の説明ではなく、ストーリーの説明だった。
しかし、里穂が桃子に言われたのは「作りたいストーリーを考えてくる」ことだ。
桃子も鈴木もその点に文句をつけることはない。
「あの……以上です……」
説明を終えた里穂は、緊張で熱くなった身体を静めるように、一口水を飲んだ。
「なるほど……」
桃子がさらさらとメモ書きのペンを走らせる。
「質問いいかな……それはどうエロいの?」
「え?」
鈴木の言葉に、里穂は言葉を失った。
「だから、その企画はどうエロいのかって聞いてるの」
「え、その、エロくはないかもしれませんが……」
「エロゲって、エロいからエロゲって言うの。わかる?」
「あの、でも、今、市場で受けているのは、萌と燃えと泣きだって……」
「ふーん、つまりそれは、里穂ちゃんの作りたいもじゃないわけだ?」
「あうう……それは……」
確かにそれはネットで拾った情報の受け売りだ。
里穂としてはなにも言い返せない。
「こらこら、いじめはその辺でストップ」




