31 類型
「相談に乗ってくれないならいいよ、もう……」
「冗談冗談、要するに里穂の場合鬱展開に持って行かなければいいんじゃない?」
「鬱展開ってなに?」
「悲劇か喜劇かって言われたら悲劇だな」
「うーん、悲劇……」
里穂の書きたいものは悲劇ではない。
でも、まだ里穂は自分の理解が足りないことをわかっていた。
「ヒロインが精神を病んで犯罪を犯したり、仲のよかった友人同士が殺し合う羽目になったり、読者に好意をもたれているキャラに理不尽な最期を遂げさせたり……」
「そういうのを鬱展開って言うんだね……」
随分わかったような気がする。
そういう展開にしなければいいと言うアドバイスはわかりやすかった。
「こういうのも需要はあるんだよ。やっぱり、読み手の気持ちを揺さぶることができるからね」
「うん、それはわかる」
最近流行っているベストセラーの小説にも、そういうものが数多く出回っている。
悲劇が好きな人もたくさんいるということだろう。
「要するに里穂はハッピーエンドで終わる話を書きたいんでしょ?」
「うん……言葉にしたことはなかったけど……そうなのかも」
「里穂は天才タイプだねぇ」
「天才じゃないよ……」
凛乎の、ちょっとあきれたような声に不満の声を返す。
「ストーリーとか文章とか、あるていどのアーキタイプがあるでしょ」
「アーキタイプって、典型とかって意味?」
「そう、普通はそういうの勉強するのさ、この展開なら次はこうなるだろうとか、この文章の続きはこう書いた方がいいとか。でも、まれにそういうの無視していいもの書いちゃう人っているわけよ。初めて書いた小説で新人賞受賞しちゃう人とか」
「わたし、そういうのじゃないと思うけど……」
「初めて書いたBLが超傑作とか」
「書かないもんっ!」




