3 今日から高校生
「…………♪」
里穂は高校に向かう坂道を歩いていた。
周りには同じ学校の生徒がひしめいていて、雑談の声が遠く空まで響いている。
落ち着かない様子の里穂は、ノートパソコンと一緒に買ってもらったスマホを確認した。
『友達とメールアドレスの交換とかするのかな……』
希望に満ちた胸の高鳴りと少しの不安。
里穂は、これから始まる新生活を噛みしめるように一歩ずつ坂道を上っていく。
「うわぁ……」
大きな校門、きれいな校舎、桜並木のレンガ道……。
里穂が夢にまで見た高校生活がそこにあった。
「ふむ……」
突然、里穂の隣に上級生らしき女生徒が立ち並んだ。
「きゃっ!」
その女生徒は里穂の肩に手を置くと、そのまま背中を伝って腰に手を滑らせ、軽くおしりをなでた後、最後に胸を揉んだ。
「なっ、なにをするんですか!」
あわてて飛び退いた里穂は、その女生徒に避難の視線を向ける。
ボーイッシュなショートカットに、意志の強そうな瞳。
男の子っぽい、里穂の苦手なタイプだ。
「君は一年だね。クラスは?」
「そうですけど……まだクラス割りを見てないので……」
「そうか……」
女生徒はポケットから名詞を取り出すと、それを里穂に手渡した。
「近藤……桃子さん?」
「そう、ボクの名前。後でこの番号に連絡をくれればいいから」
「え?」
「なんならボクからキミの携帯にかけるよ? 番号教えて?」
「……け、携帯持ってません」
「そう、それじゃあまた後でね」
里穂はがっくりとその場でうなだれた。
「嘘ついちゃった……もう学校で携帯出せないよ……」




