23 自己紹介
「というわけで、今日からこの会社で働くことになったライターの沖田里穂君だ。みんなよろしく頼む」
「よろしくね~」
「がんばれよ」
「かわいいだな」
マンションの会議スペースに、社員全員が集まっていた。
桃子の隣に里穂が立ち、鈴木、理恵、今年大学を卒業したばかりの松原が椅子に座っている。
「あの、がんばりますのでよろしくお願いします」
「彼女は今年高校に入学したばかりの一年生で、ボクと同じ文芸部に入っている。その縁があって仕事を依頼してみたという経緯があるんだけど……なにか質問はあるかな?」
「はーい、家はお金持ちですかー?」
「え?」
そんな質問が来るとは思わなかった様子で、里穂はおろおろとしている。
「ふ、普通だと思いますけど……」
「お小遣いはいくらですかー?」
「あ、あんまりもらってないと思います……」
「貯金はありますかー?」
「す、少しなら……」
「私にお金を貸してくれますかー?」
「…………」
里穂以外のその場にいる全員が、理恵を責めるような目で見ていた。
「ううっ、誰か私にお金を貸して……」
「なにもかもダメなやつめ……」
桃子はちょっと怒っていた。




