2 適齢期
「里穂、パソコンの調子はどう?」
「もう、嫌になっちゃう……」
クリームシチューに野菜サラダ、それとバスケットに放り込まれた五種類のパンという簡単な夕食を囲んでいるのは、40歳手前の母親と高校入学を明日に控えた里穂に、小学生の末娘という面々だった。
「なんかあったの?」
末娘がちぎったパンを口に入れながらしゃべる。
素朴な魅力を持つ長女とは違い、生き生きとした魅力を放つ末娘は、胃の中にガツガツ食事を放り込んでいた。
「聞いてよ光、それがね……」
里穂はパンを憎い敵のようにちぎりながら、さきほどの出来事を不満そうに語った。
男のいやらしさ、ネットの非常識さ、輝く未来に踏み出したはずの一歩目をつまずかせたすべてに、里穂は当たり散らす。
「やっぱりインターネットは怖いのね……テレビでもたまにやってるけど……」
「ねえ、お姉ちゃん。後であたしにも見せてよ」
「ダメよ、里穂」
「わかってるよ……あんなの見たってしょうがないんだから」
「そんなことないよ~クラスにも見てる娘とかいっぱいいるんだから」
「よそはよそ。ウチはウチ。光にはまだ早いの」
「お姉ちゃんだって見てるじゃん!」
「お姉ちゃんはちょっと遅い」
「…………」
里穂はパンをかじりながら、がっくりとうなだれていた。