13 マンション
「ここよ」
「ここ……ですか?」
桃子に案内されたのは、古ぼけたマンションの一室だった。
ネームプレートはかかっておらず、誰が入居しているのかわからない。
「さあ、入って?」
「は、はい……」
桃子は扉を開けると、里穂に中に入れと促す。
「お、おじゃまします……」
部屋の中はきれいでもなく汚くもなく……たまに誰かが掃除しているという感じの部屋だった。
「さあ、あがってあがって」
「はい……」
玄関に上がるとすぐにキッチンになっており、奥の部屋につづく扉が二つある。
「右の部屋は宿泊室。正面の部屋に入って」
「宿泊室?」
「そう、後で説明するから」
「…………」
緊張気味の里穂が奥の部屋に進むと、部屋の中にブラとパンツだけになった女性が眠っていた。
「えっ……」
「……紹介するわ、姉の理恵よ」
桃子が下着姿の女性を揺さぶって起こしはじめる。
「ほら、お姉ちゃん起きて、お姉ちゃん」
「んあ……おはよう、桃子」
「おはよう、どうしてそんな格好で寝てるの?」
「うん……一張羅のジャージを洗濯しちゃったのよ~」
「一張羅……ほかに服を持ってないんですか?」
「うん、住むところもないし、貯金もゼロ円よ」
『こ、この人はだめな大人だ――』
初めてのアルバイトの高揚感よりも、不安の方が勝る里穂だった。




