11 履歴書
「ねえ、お母さん。履歴書の書き方知ってる?」
「さぁねぇ……もう昔のことだから……」
「ううん、いいの。ちょっと調べてみるね」
桃子から、興味があるなら履歴書を書いてこいと言われた里穂は、高校に提出した履歴書のあまりを使って書いてみることにした。
しかし、履歴書に添付されている例はどうにも使いづらく、困り果てていたところだ。
「そうだ」
こういうときに活躍するのがネットのいいところだ。
里穂はパソコンの電源を入れると、早速検索エンジンに「履歴書の書き方」と打ってみる。
「あるある、いっぱいあって困っちゃう」
画面いっぱいに表示された履歴書の書き方講座のひとつを適当に開くと、頭から順に読み始める。
「履歴書は、会社に貢献できる人物であるのかどうかを見極めるものです。ふむ」
「入社後に達成したい目標は何であるかをきっちり書きましょう。ふむふむ」
履歴書の左半分を占める欄は、何を書けばいいのか一目瞭然だ。
名前や住所や卒業した学校を書けばいい。
でも、右側半分は違う。
事実をそのまま書けばいいというものではなさそうだった。
「次に具体的な書き方の例に移ります。ふむ」
里穂はカチカチとマウスをクリックして、ページを読み進めていく。
「名前と住所に電話番号……?」
なにに使うのだろうと思いながらも、里穂は真面目に情報を打ち込んでいく。
そして更にマウスをクリックすると……。
「…………」
里穂が突っ伏しているその先には、クレジットカードの番号を聞いてくる画面が大きく表示されていた……。




