10 相談
「学校はどうだった?」
「うん、楽しかったよ」
「高校生なんだからさぁ、もっとなんかなかったの?」
生意気な口を利くのは妹の光だ。
「うん……あのね、お母さん。私、文芸部に入ったんだけど、そこの先輩が私の書いたものを読んでくれて、文章のアルバイトをしないかって……」
「あら、いいじゃない。ぜひやりなさいよ」
「本当? いいの?」
「あんたは引っ込み思案だから、なんでもやった方がいいよ」
きっと止められると思っていた里穂は、思わぬ母親の理解に驚いていた。
高校生になるということを、じんわりと実感する。
「いいなー、お姉ちゃんアルバイトできて」
「あんたはまだ早いからね!」
「いつになったらいい?」
「お姉ちゃんと同じ高校生になったら!」
さすがに小学生が働けるところは限られてしまう。
母親が駄目と言わなくても、まともなところで雇われることはないだろう。
「まだ何年も先じゃん!」
「わたしがお給料もらえたら、少しお小遣いあげるから……」
光がアルバイトをしたいなんて、かわいい面を見せるのは珍しい。
どちらかというとスレている光は、働かずに遊んでいたいと言い出しそうなタイプだ。
「本当、お姉ちゃん!」
「だめよ、里穂のお給料は家に入れてもらうんだから」
「じゃあお母さんと私で半分こね?」
「わたしの分がなくなっちゃうんだけど……」
冗談とも本気とも付かない会話に、里穂は少し恐怖した。




