時間管理人の仕事
チクタクチクタク…
ここは宇宙に作られた時間を管理する専門機関。
大小様々な歯車が一秒よりも小さい数字を正確に刻みながら動いているのだ。
僕はたった一人でこの場所で
ここの管理を行っている。
仕事は多岐にわたり
一つ一つの歯車のメンテナンスはもちろん。
望遠鏡で各惑星の時間がズレていないかを確かめる等をしている。
もし時間がズレているようなら
歯車をパズルのように組み換えて安定させる作業をしているのだ。
規模が大きい為に毎日が忙しく
猫の手を借りたい気分だけど
組み換えなどの作業はとても精密で
幼少から専門教育を受けた僕以外には
扱えないことになっている。
だから僕は10年間。
独りぼっちで生きているのだ。
でも「寂しい?」と聞かれると
僕は首を縦に振ると思う
だってもう慣れた。
いや…。
慣れるしかなかったのだろう……。
大小様々な歯車が動き
歯のきしむ音や
時間のきざむ音が聞こえてくる。
その光景はまさに圧巻で
さらに驚くのは
その動きや音は特別大きいものでもないのに
身体の髄にまで響いているようで
小さい歯車までもが僕たちを支配していると感じ
言葉を失ってしまう…。
そういえば試用期間の頃。
先代から「時間は無限に見えて有限だぞ」と教えてもらったことがある。
最初は意味が分からなかったけど
たくさんの『終わり』を見ていれば嫌でも感じてしまう…
星や生き物が死ねば
その動いていた時間が止まってしまうから。
ゴーン…
ゴーン…
機関の中心に設置してある大きな鐘が鳴った。
これは「何かが終わり」を知らせる音だ。
これを聞いた時
僕はいつも
心の引っ掛りを取るように息を吐き出ている。
仕事の緊張感などから解放されて
不思議と安心するからなのだろう。
まぁ正直よく分かっていないのが本音だ。
「さて…。修正作業をしようかな…」
ちなみに
この間は僕の分身のフォログラムが代わりに管理をしてくれる。
これが全てやってくれたら、どれだけ楽か…。
そう思うけど
この分身は
僕が修正や休み時間の間だけしか機能しないから使えない。
僕は分身に「少し、頼んだよ」と伝えた。
当然
分身は答えないし反応もしない。
無駄な掛け声だと言う人もいるけど
僕には
これが唯一の会話で
その度に僕は「僕」という自分を認識する重要な行程なのだ。
だからバカにされても止めることは出来ないと思う…。
ふと歯車を見上げる。
この歯車が一秒を刻む度に
管理してる僕も時間に管理されているのだろう。
そう感じながらこう呟くのだ
「よし、今日も時間は順調に進んでいるね…」と……。