5話 決意したようです
『白。あなたは…一体』
女神が信じられないような目で見てくる。多分彼女には俺の聖剣の能力が見えているんだろう。なにもないそれが俺に与えられた聖剣であるようだ。最もひいてはいけないものを引いてしまった感覚。
「女神様申し訳ありません。やっぱり俺は選ばれた人間ではなかったようです。やれることはやってみようと思います。女神様の加護がありますし、こんな俺にも何か出来ることがあるはずです…」
視界が歪む。涙だろうか。期待に応えられなかった。これから俺に起こることを想像してしまう。
女神様は俺を呼び止めようとはしなかった。ただ一言だけいった。
『見守っています。あなたに祝福を』
その言葉に溜まっていた涙が零れた。彼女にはそれしかできないのだろう。滅びゆく世界を見ていることしかできない。この真っ白な空間から。だから決意した。俺は強くなる。聖剣の能力はないかもれしれない。でもまだ努力をしていない。今まで努力なんてしたことのなかった俺が努力してやる!
泣いてなんかいられない。
扉が近づいてきて、俺は決意した女神が居た真っ白な空間から出ていった。
「やっと出てきたな!結構長かったじゃねえか!
お前の髪色は白か!名前と一緒じゃねえか。がははは」
一番に笑いかけてくる。厳つい顔。少し頬が緩む。
「おお。ちょっとな。女神様の力に見惚れていたんだよ。あと特別にってやつを貰ったぞ
って白色か。似合ってなさそうだな」
「へえ。特別。さらに特別なことって何だろうね」
「それは後のお楽しみだろ?」
そういって適当にはぐらかす。そうするとシスターたお辞儀をしていた。
「これであなたたちは正式に聖剣使いとなりました。女神様の願いはただ一つ魔王軍を打ち滅ぼすことです。あなた方の力を存分にお使いください」
シスターは元来た道を歩き始めた。それに俺たちも続く。
おれは決してバレてはいけない。自分に能力がないことを。そのためだったらなんだってしてやる。
「まずは国王に報告してもらいます。自分がどういった能力をもっているのか」
え?嘘だろ。いきなり詰みなんだけど。それ報告する必要…まああるよな~。この国に謀反を起こす可能性があるためだけに最低でもそのくらいのことはしておかなくてはな。
シスターに連れられ、俺たちは懐かしの玉座に入る。そこには前よりも偉そうにふんぞり返る国王と臣下とたくさんの人がその場所に集まっていた。衛兵までいるからそれなりに警戒しているようだ。
「シスターご苦労にゃも。下がってよいにゃもよ。
聖剣使い共も無事、チカラを得られたことを祝福するにゃも。女神に感謝にゃも」
こいつ。前よりもおかしくないか?その口調で話せばどう考えても不敬だろ。それでも片膝をついた状態で待つ。氷菓さんが何も言わないのであれば何かこちらから言う必要も無いだろう。
「それじゃ、さっそく余に聖剣使いの能力を教えるにゃも。国の重要な戦力。無駄なく使ってやるにゃも」
なんだ?何か違和感を感じる。この違和感は…
疑問に思っていると何ともなしに氷菓さんが話し始める。俺はそれに酷く驚いた。
「私の能力は氷を操ることができます。氷の創造や足元を凍らせての高速移動が可能です」
「俺は炎使うことができる!剣を振ることで爆発を生じさせ、多くの敵を殺すことができるはずだ」
「僕の能力は雷ですね。自分を雷に変化さえることが可能なようでした。常に刀身には雷が纏っています」
「…私の…能力は…」
おいおい。皆普通に言うじゃないか。あの態度の王に対して、従順すぎる。それに美玖まで。こんな大勢の仲なのに声を張っている。
「…ど、どk…植物を生成することです…。他は特にありません」
なんでみんな素直に答えるんだ。いや適当言っている可能性はあるが。そんな風には見えない。言ってから自分が何でいったのか考えているようだったためだ。これは間違いなく何かされている。
みんなの能力は氷、炎、雷、植物か。強力な個性があっていいなあ。
残るは俺か。ここはとりあえず流れに任されておくか。適当に考えた策だが
「…俺の能力は分からない…」
そういった瞬間にざわつき始める。それはそうだ。普通の聖剣使いなら持った瞬間にその能力が分かる。おれもそうだったのだから。
「…女神様に聞くと能力はあるらしい。成長する過程でそれを会得することができるようになるようだ」
それを聞くと、周りのやつらが納得したように頷いたが、明かにばかにしたような視線を向けてくる。能力が無いというよりかはマシだろ。それに本当に成長すれば能力を得ることがあるかもしれない。
「そうにゃもか。そのカスは放っておいて。そちらの4人はよくやったにゃも。無事女神の力を行使できるようになったにゃも。
今日は何か話し合うこともあるにゃもだし、これでこの場はおわりにゃも。それとそこのカスはあと数日で出て行ってもらうにゃも。余たちには即戦力しか必要ないにゃも。ザコに付き合っている余裕なんてないにゃもよ
それとな雑魚。聖剣はそれ以上、成長することないし、成長するのは自分自身であって聖剣ではないのだからにゃもな!」
周りから嘲笑が聞こえた。そうなのか初めて知った。しかし、顔に出してはいけない。本当のことになってしまう。俺は素直に出ていくことに了承するために声を絞り出す。しかし、これなら能力がないとはっきり言ってしまってもよかったかもしれない。いや、放置するのだとしてたら間違いなく、何か裏があるはずだ。
「…はい」
間違いなく薄気味悪い能力で氷菓さんたちは操られている。能力は秘密にしようという話だったはずだ。それに美玖の行動が一番疑問に思った。彼女はこんな大勢の前で話すことは困難だ。
だとすればここで抵抗すれば、他の4人から殺されることも考慮しなくてはならない。そしていつか戦うことになるかもしれない。
それから、俺たちは玉座を出た。氷菓さんたちも何か得体のしれないものに操られていると思っているのか、俯いた状態で歩いている。これが他の聖剣使いが見えなかった理由か。
俺たちは各自、自分の部屋に戻った。一人になった瞬間に自分に力が宿らなかったことに悲しくなる。これからは俺はどうなるのか。
これからは俺は自力でお金を稼がなくてならない。それに稼ぐだけでなはい。女神と約束したように俺は力をつけなければならない。安全にレベルアップするにはパーティを組む必要がある。しかし、この世界に信用できるものがいるのだろうか。しばらく一人でやろう。
大丈夫だ。少なからず俺は聖剣使い。ステータスはそれなりに高いはずだ。地道に確実に才能ない俺にはそれしか許されない。ふと去り際の女神の声が蘇る。
「見守っているか…。絶対強くなって見せます女神様」
ーステータスー
『女神アイソーテの使徒』の称号を手に入れました。