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2話 自己紹介のようです 

「冗談にゃもよ。そんな怖がらなくてもいいにゃも」


 さっきとは一変して、またふざけた口調に戻った。俺たちは全員さっきの言葉が冗談には全く聞こえていなかった。もし仮に事を起こすにしても聖剣とやらを貰ってからだろう。


「余からは以上にゃも。明日に備えてゆっくり休むといいにゃも」


 そういうと、どこからともなく男が現れ、こちらに来るように案内された。

 与えられた部屋はとても豪華なものだった。1人で使うには何もかもが大きすぎて、少し落ち着きが持てなかった。そういえば国王は女も融通すると言っていた。そういう意味でもこの部屋は利用されるのかもしれない。


 大きすぎるベッドに身を預ける。ふわふわしたマットレスが俺の身体を支えてくれた。


 何がどうなっているか分からない。俺はあの場に来るまでは地球に居た。直前の記憶はないが、大学を卒業し、公務員試験に合格し、市役所で働こうとしていたはずだ。そういえば今の俺の恰好は日本でいつも着ている服ではない。動きやすくシンプルな恰好ではあるが、日本人が着るような服ではない。どこかの民族が来ていそうな服だ。


 そういえば他の4人も顔ばかり見てしまったが、これと同じような恰好をしていた。あの時はそんなこと気づきもしなかったが俺たちが意識を取り戻す前にあいつらにはいろいろ調べられていたようだ。いつも持ち歩いているスマホや財布もない。全くどうなっているのか全く分からない。


 …一度あの4人からも情報の交換をしておいた方がいいかもしれない。まだ俺が弱いと決まったわけではない。そもそも俺が弱いからと言って、嫌がらせをするような輩でもないかもしれない。

 そう思い、部屋の外に出ようと一歩でたところで、ノックが聞こえた。


「さっき同じ場所にいたものだが、少し話したいことがある。入ってもいいだろうか?」

「ん?ああ。俺も少し話したいと思っていたところだ。今開けるから少し待ってくれ」


 そのまま、ドアを開けると大和撫子だけではなく、他のメンバーも既に揃っていた。めんどうが省けた。


「訳の分からない状況だ。少しみんなで情報を交換しませんか?」

「ああ。俺もそう思っていたんだ。面倒だから俺の部屋でいいか?」

「いいですよ。こちらかもよろしくお願いできるかな?」


 そういうと、全員を俺の部屋に招き入れる。

 やはりというかまず口を開いたのは大和撫子の女性だ。こういう会議のような場には慣れているように感じる。まだ若いのにすごいと感心してしまう。


「まずは、自己紹介をしよう。私の名前は明星氷菓(みょうじょうひょうか)です。歳は18歳。この前高校を卒業しました。もちろん剣を扱ったことはないです」


 次に話し出すのはあのイケメン。凛とした声が俺の部屋に響く。学級委員長のような人だな。あと剣を使ったことはないと。まあどうやら俺たちは剣を扱うことになるかもれしないからな。


「じゃあ、次は僕だ。名前は天川誠也(あまがわせいや)。歳は同じく18。僕もこの春、高校を卒業して、大学に進学することが決まっていた。剣は一応は剣道習っていたから心得はある方かな?よろしくね!氷菓さんとみなさん」


 なぜだろう?全く信用できない…。胡散臭いというのだろうか。しかし、イケメンマスクのスマイルに隠れて、なんとなくという感じるだけだ。気のせいということにしておこう。

 そのまま時計回りに自己紹介が続く。赤髪の不良青年だ。


「あ~。次は俺か?銀餓焔(ぎんがほむら)。歳は20だ。俺は専門学校を卒業してこれから働こうとしていたところまで記憶が残ってんな。後は剣の扱いか?バット振り回したくらいか」


 そのバットは本当にボールを打ってたんですかね?実はボールじゃない何かを吹っ飛ばしてそうだな。剣とバットが同義ってこいつの中の剣はどうなっているのだろうか?あと、怖い。こっち向かないでくれ。あ。次は俺か


「俺の名前は竜胆白(りんどうはく)。歳は最年長の22歳。大学を卒業して公務員として働こうとしていた…はずだ。直前の記憶は全く覚えていないし、気づいたらあの場にいた感じではある。

 剣の扱いは当然ないし、この通りひょろい身体だから運動も出来る方ではないよ」


 周りは自分も同じような感じだと頷くような感じだ。特に問題はなさそうだ。

 男二人は互いの時もそうだったが、あまり興味がなさそうだ。これなら俺が弱くても突っかかってくることもないかもしれない。まだまだ分からないが…

 最後はボブカットの根暗な女性。小さな声で話し出す。


「…えっと…。私は木村美玖(きむらみく)。18です…。私も…運動は苦手…です」


 自信なそうに自己紹介した。気弱そうな感じだ。

 そして自己紹介が終了した。


「じゃあ、まずは状況を確認をしよう。

 私たちは聖剣使いなようだ。私だけかと思ったが、他にも剣の扱いを心得てないものがいる。軍人のような訓練を受けた者もいないようだ。

 そして私たちはやはり同時期にここに呼び出され、統一性があるとすれば、卒業したところで召喚されたという形になるのだろうか。私たちは初対面で全員面識は無いと思っている。…あったらすまない。

 このくらいだろうか?」


 大和撫子の氷菓さんが今の状況をまとめてくれた。本当はメモにでもまとめたいところではあるが…

 それに相槌を打つようにイケメン男の誠也が口を開く。


「そうだね。僕もみんなに面識は無いかな。皆剣の扱いがあるのかと個人的には思ったんだけど。そういうわけではないみたいだね。歳もバラバラだしね」


 そう言いながらこっちを見てくる。ん?こいつはバットを振り回すことが剣の扱いがあるのと思っているのか?それにしてはこちらを馬鹿にしすぎているような目線を受ける。


「そうだな。俺は全くといって運動はしてないぞ。部活にも入ってなかったからな。人よりも運動ができないことは自信がある。記憶に関してもそうだが、卒業後の記憶があやふやで全く覚えていない。これは全員がそういうことで大丈夫か?」


 意外なことに不良男が相槌を打ってくる。こいつ外見だけ厳つくて中身は優男なのか?


「俺も野球で少し運動神経に自信があるだけだ。自慢できるほどじゃない。

 記憶に関しては俺も同じだ。卒業後の記憶はよく覚えてない」


 そういうと、他のメンバーも同じように頷く。


「あと気になったことは服だ。俺はいつもはこんな服を着ない。俺が意識が戻ったのはあの間で王様が話す直前だ。いつも持ち歩いてるはずのスマホもない」

「確かに…。私もこのような服は着ません…。スマホも無いですね」


 やはり皆、同じような感じなのだろう。まあ今は分からないことを考えてもしょうがないな。まずは分かっている、後日あると言われている女神様からもらう聖剣について考えてみるか。


「俺から言っといてあれだが、全員が同じような状況なようだ。今思っている疑問は今の状況じゃ、考えても分からないと思う。だから聖剣について話さないか?」


「…それについても分からないことだらけですけどね。振るだけでその魔王軍を滅ぼせるなんて剣をなんの制約もなしに授けてくれるんですかね?」


「確かにとても危険なようなものに感じますね。もしかしたら私たちは強制させて戦わされるかもしれません。しかし、戦わないわけにはいけません。あの王の言葉はどこか狂信者を思わせる発言も多数ありましたし、何をされるか分かったものではありません」


 そういう話を繰り返した。今ある状況では結局何もわからないという結論に至った。聖剣がとても危険なものである。魔王軍とは何なのか?RPGでいいう人ではない化物のこと言っているのか。一人で考えていたときよりも、分からないことが増えた。しかし考えることで、得体のしれない恐怖から気を紛らわせることができたと思う。




 そして、俺は誰かが弱者だった場合の話は怖くて話すことができなかったのである。


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