ぬるま湯
ぬるま湯にどっぷりつかって、良い気分。
ああ、ここは、至福の楽園。
いつまでも、いつまでも、ここでのんびり、浸かっていたい。
ぬるま湯に、どっぷりつかって、はや幾年。
なんだか少々、お湯の温度が上がってきたような。
でも、まだ浸かっていられる。
だって、ここは楽園。
いつまでも、いつまでも、ここで浸かっていたい。
ぬるま湯に、どっぷりつかって、はや幾年。
最近、お湯が熱くてたまらない。
でも、浸かっていないと。
ここは楽園だから。
いつまでも、浸かっていないと。
ぬるま湯に、どっぷりつかって、はや幾年。
お湯が煮えたぎって、逃げ出したい。
出ることが、できない。
逃げ出したい。
逃げ、出したい。
逃げなければ。
逃げ、
に、
げ・・・
いつの間にか、沸き立つ熱湯になっていたぬるま湯に、私の体が溶けてゆく。
ぐつぐつ煮えた、ぬるま湯の中で、私の体は茹で上がり、煮崩されて湯に混じる。
最後に残った、私の白い骨が、湯の沸き立つ振動で、カタカタと揺れた。
最後に残った骨だけが、ケタケタケタと歯を鳴らし、この惨劇を笑い飛ばした。