男の娘
「よ! 井上…だったよな。俺、勝城亮っていうんだけど。」
あ、あのサッカーイケメンだ。背高いな…。160以上はありそうだ。え? 高校生男子で160は普通だって? 僕にとっての話ですよ。身長155の僕にとって160㎝台は普通に高身長なんですよ! 思ってて嫌になる!
「うん、憶えてるよ。サッカー部だったんでしょ。上手そうだよね。」
いつもの笑み、いつもの笑み。いつもの感じで、落ち着いて…。
「へぇ、憶えててくれたんだ。嬉しいよ。……ところでさ、失礼になるかもしれないけどさ、訊いてもいい?」
なんだろう。失礼な事って…。
「構わないけど。」
「井上ってさ、女子ではないんだよね。」
…………あ、そっちでしたか。ええ違いますとも。正真正銘の男、漢字の漢と書いての“漢”ですとも。
「うん、僕、男の子だよ。」
少しだけ愛想笑いを浮かべてみる。すると勝城君はさっと後ろを向いてしまった。
えっ? 僕何か悪いことしたかな?
―――勝城目線
やばい、やばい、やばい! マジでヤバイ! なにあの可愛い小動物みたいな笑い。
やべぇな…。そっち方面に目覚めてしまいそうな気がする。
「どうしたの?」
どうしたの? じゃねぇんだよ! そんな場合じゃねぇんだよ! 俺の人生の分岐点なんだよ! 今!
よし、落ち着け。すーしてはーだ。すー、はー、すー、はー。
「いや、ごめんね。ちょっとコンタクトが落ちちゃってさ。」
「別に別に、コンタクト大丈夫かな?」
そう言って井上は俺に顔を近づけて来る。近い近い近い! あれ? なんかいい香りがするような…。肌綺麗だな。目も大きくて…可愛い。もうこいつでもいいかもしれない。
「結婚しよ。」
「ええ⁉ ちょっ、勝城君! 何言ってるの⁉ は? え? そ、そっか、寝ぼけてるんだね。うん、そうだよね!」
ん? 俺、今なんつった? え? えええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼‼‼‼‼
「ごめんね。寝ぼけてたみたい。」
「うん、そうだよね。さっきの言葉も寝ぼけてたんだよね。」
ふぅ、何とか助かった。……でも、マジ恥ずかしいぃぃぃ! はぁぁぁ⁉ 馬鹿か俺は!
「井上、俺と友達になんね?」
「え、いいけど。」
そう言って俺は井上のLINeのアドレスを手に入れた。何このアイコン、マジ可愛いんですけど。
こうして、俺、勝城亮は絶世の美女、もとい、絶世の可愛い系男子井上と友達になったのだった。
どこからか「はぁはぁ」という声が聞こえるが、気のせいだよね。