閑話休題『男の娘の描写って難しい』
始業式が終わり、生徒会室でのお説教も終わったので僕は自分の教室に向かうことにした。
一年生から二年生への進級はクラス替えがないので今年も秋桜と同じクラスだ。
秋桜と知り合ったのは中学の入学式。
水仙とはぐれてしまって、中学校の敷地内で迷子になりウロウロしてると一人の生徒を見つけた。
初めて見たとき、女の子かと思った。
栗色のセミロング、パッチリした二重の目、整った目鼻立ちに小柄な体躯。
現実に妖精っているんだなって。
いやあんときはまじびびったわー。
危うく告白してフラれそうになったもんフラれるんかい。
その後の会話を聞いてその気持ちを失せたが…。
「ああ、すいません。一年三組とはどちらでしょうか?え?こっちの校舎じゃなく新校舎の方?なるほどありがとうございます。ははは、迷子になってましたね。いえいえ災難ではありませんよ。迷子になったおかげで貴女のような美しい先輩に出会えたんですから。」
しんしぃぃぃぃぃぃ!
中学生でそれ言えるって何なの?名前セバスチャンだろ。それ執事。
別の意味でドキドキして告白したくなったわ。
まぁその後、僕も迷子だったので一緒に行こうと話しかけて友達になれたんだけどね。
そんな優男ならぬ、優紳士に仕事を押し付けてしまったのだ。
しっかり謝って、放課後にケーキぐらいは奢らせてもらおう。
「俺は気にしてないから、華織も気にしないでいいんだよ?」
優紳士は少し困り顔で優しいことを言ってくる。
「それじゃ僕の気が済まないんだよ。どうかお詫びをさせてくれ。」
お詫びといっても僕にできる範疇で、なのだが。
「うーん。じゃあ、貸しにしといてよ。俺が困ってたら今度は華織が助けてくれるかな?」
「え、そりゃいつでも助けるけど…。」
秋桜が困ってたら助けになりたい。味方でいたい。
「ふふ、頼んだよ。あ、でも放課後買い物に付き合ってくれるかい?」
僕をみて少し笑い、話を濁されてしまった。
「じゃあ行こっか?」
「おう。」
ホームルームも終わり、今日は始業式だけなので授業も部活もない。
午前中のうちに水仙には連絡をいれておいたので自由な放課後がやってきた。
「買い物ってなにを買う予定なんだ?」
「母の誕生日が近くてね、プレゼントを見繕うのを手伝ってほしいんだ。」
なんかもぉキラキラしてる。
できた人間すぎるなぁ。
「でも僕センスないぞ。」
自慢じゃないが、十六年彼女なんかいないんだ。女の、しかもお母さま世代の人が喜ぶものなんてわからない。
「あはは、実際期待はしてないんだよねー。」
をい。
「一人でお店に入るのってちょっと緊張するから、一緒にいてくれると安心できるんだ。」
おおう。
素敵スマイルを僕に見せるな惚れそうになる。
「ま、まあ息子から貰うものなら何でも嬉しいだろうよ。」
「俺もそう願うよ。」
家族仲が良いのはいいことである。
教室から廊下に出て、下駄箱に向かう途中で校内放送があった。
『二年四組 水城華織君。至急理事長室まで来てください。』
「理事長がお呼びだね。」
「今日は秋桜とデートだから無理。」
「…ぅえっ!そ、それは嬉しいけど…。いいの?」
「いいんだよ。こんないきなり呼びつけて来ると思うなっての。」
これで行ったらまたいつ呼んでもいいと思われちゃうからなー。
「たまには無視しないと付け上がるんだから。」
『五分以内に来ない場合、前回の数学のテストの点数が六十点マイナスされます。』
「今すぐ行きます。」
ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
あの野郎!点数を盾に取りやがった!!
「秋桜本当にごめん!せっかく誘ってくれたのに!」
朝から迷惑かけて、お詫びの買い物付き合えないとか。
本当救いようがない。
「仕方ないなぁ。ただし!今度の日曜日は絶対に付き合ってもらうからね?」
「ああ!日曜な!わかった。ホントにすまん!」
「いいからいいから、早くいってらっしゃい。」
ああくそ!そもそもなんの用だよ!
てかここから理事長室って走っても五分ギリギリだぞ!
今日は走ってばっかりだ。