序章の序章『猫でます』
「マジでこんな時間にどうしたんだよ。幼馴染のよしみだよーとか言って晩御飯作ったり、買い出し手伝ってくれたくれたことは何度かあったけど頑なに放課後しか手伝ってくれなかったじゃんか。」
手伝ってもらっている身でありながら、家が隣なんだし朝ご飯とか作りに来てくれよって頼んだことがあるのだがその時は
『私の朝の五分は二時間分に匹敵します。それに見合う満足度を与えてくれるのですか?』
って断られた。
真顔だったなぁ…。
「いえ、私も改心したといいますか…色々助けてもらっているのに朝眠いからって手伝いを断ったのは酷かったかな、と思いまして。」
眠かっただけかよ!
「助けたりはしてないけど、手伝ってくれるのはすごいありがたいよ。うん、ありがとう。」
「はい!これからも時々お邪魔しますので今度朝ご飯も作りに来ますね!あ、ところで私朝ご飯まだなんですけど私の分とかありません?私今日はパンの気分なんですけどーー」
「今日の朝ご飯は天丼だぞ。」
「馬鹿なんじゃないですか!?」
海老揚げないとな。
「遅刻寸前じゃん!」
「…面目ありません……。」
朝からおかわり二杯もするかね!?
見ていて気持ちのいい食べっぷりだったけども。
「なんですかあの天丼は…!天丼のドッカリ感を梅肉が相殺し、プリップリの海老、お肉のしそ巻き、ゴボウの天ぷら、とてもおいしかった。美味しすぎました!」
四の五の言われるより、普通に美味しいって言われると照れ臭いけど嬉しいな。
「水城君料理の腕前また上達したんじゃないですか?」
「ありがとさん!お褒めにあずかり光栄だけどあと十分で学校に着かないと二人仲良く水仙に殺される!」
「お、おなかが重いです…。」
「でしょうね!」
僕たちは通学路の河川敷を二人で走っていた。
水城家から学校まで歩いて二十五分。
学校には八時三十分には着いていないといけない。
そして今の時刻は八時十分。
走ってマジギリギリです。
「でもこのまま何事もなければ間に合う!ってあれ?柊?柊さん!?」
僕の一歩半遅れて走っていた柊がいないと思ったら栗色の髪をなびかせ、植えてある桜の木を見上げて立ち止まっていた。
「水城君、あれ。」
「あれ?」
柊が指さすところをみるとそこには白いモフモフした物体が…。
「にゃんこかアレ?」
「…………。」
「なんだよ。」
不思議そうなぽかんとした顔で柊が僕を見てくる。
え?あれにゃんこだよね?
「………にゃんこ?」
「……………っつ!!!」
心臓がギュってなった。
「ね、ねこ!あれ猫だねうん!」
しまった!これは…!
「い、いえ…にゃんこですね。すいません。んっふう、にゃ、にゃんこって…。いふふふ、だ、だめです。吐きそう…。」
ちくしょう!忘れてるかもしれないけど時間ないんだからな!
「あの猫はなんであんなところにいるんだろうな?」
「う、うぇっ!うぷ…。え?何ですか?あのにゃんこがどうかしたんですかにゃ。」
うぜぇ!ちくしょううぜぇ!
「だからあの猫はなんであんなとこにいるんですかね女王様…。」
「ん、んふふふふふ。え?ああ、なんか登ったはいいけど降りれなくなったらしいですよ。意外と高くてマジこえーだそうです。」
そんなテンプレな猫がこの町にいるとは…。
ん?だそうですってお前…。
「あの猫が何言ってるのかわかるの?!」
「わかるわけないじゃないですか。適当ですよ。」
しれっと嘘ついたぞコイツ!
「とはいえ震えていますし、怯えているのはたしかですので助けてあげないとですね。よっと…。」
「……!待て柊!お前スカートでそんなに足上げたら…!」
「…!!!み、見ました?」
「見てません。」
縞パンなんて見てません。
こんなテンプレなパンツの女の子がこの町にいるとは…。
「この子飼い猫っぽいですね。電話番号が書いてあります。」
柊が腕に抱いた猫の首輪を見ながら教えてくれた。
「じゃあとりあえずは飼い主さんに電話だな。繋がればいいけど。」
そこで電話をしようとブレザーのポケットから携帯を取り出したところで僕は現実を思い出してしまった。
時刻は八時二十三分。
水仙からの着信が八件、メッセージのお怒りスタンプが今も増え続けている。
「柊…走るぞ。」
僕は木の下に置いていた自分の鞄と柊のリュックを手にとり走り出した。
「え?この子はどうするんですか!?」
「とりあえず連れて行くぞ!遅れた理由の物的証拠がないとこれは許してもらえない!」
「え、ええぇ!いいんでしょうか…?」
「四十分から始まる始業式には間に合わないと…。」
「いいんですかねぇ。」
ンナーとのんきに柊の腕の中で鳴いている。
言い忘れてたけど柊は胸がデカい。
背丈は小柄だが、ブレザー越しでもわかるぐらい大きい。
そんな中であの猫はのんきにしている!
場所変われ!!
横腹が痛いなぁ!!!




