Episode:96 証拠
◇Rufeir
どうしてあたし、こうなんだろう……。
後悔してた。
とっさとは言え、また何人も殺してしまって……。
自分が嫌になる。
「いいのよ、ルーフェイア。あなたのせいじゃないんだから」
そう母さんが何度も繰り返してくれるけど、気は晴れなかった。
あたしがやったというのが、変わるわけじゃない。
涙がこぼれて止まらなかった。
あたしなんか、いなければいいのに……。
「うーん、やっぱり可愛いわねぇ♪」
「――え?」
あたしの顔を覗き込んで、母さんが妙なことを言い出す。
「あんたの泣き顔。
写影に撮っとこうかしら♪」
「や、やめてよっ!!」
とんでもないことを言い出されて、慌てて涙をこらえた。
なにしろ母さんが大事にしてるアルバムときたら、とても見たくないようなあたしの写影ばっかり並んでいる。
それにこれ以上追加されるのは、絶対にイヤだった。
「はい、その調子その調子。
あたしは泣いてても可愛いからいいけど、みんなが気にするわ」
そう言って母さんが、今度はイマドに向き直った。
「イマド、説明できる?」
「――はい」
彼がはっきりと答える。
母さんがそれに、満足そうにうなずいた。
「それで、どんな場所だったの?」
「どっかの屋敷みたいでしたね。かなりの広さの。そこでこいつらの親玉と、誰か偉そうな人とが話してましたっけ」
「なるほどね……」
みんなが納得したみたいにうなずいた。
けど、ここの事情にはあまりあたしは詳しくないから、意味が分からない。
「ねぇ、どういうこと?」
「――ようするにね」
レニーサさんが口を開く。
「ファミリーがどこか国の上の方の連中とつるんでるんじゃないかっていうのは、さっき言ってたでしょ? それがつまり、その屋敷の誰かさんじゃないかってことなのよ。
まぁ恐らくは、軍か警察か大統領の側近か……そんなとこでしょうね」
「そんな……!」
もしそうなら、本当に犯罪組織がやりたい放題になってしまう。
「多分、レニーサの言うとおりでしょ。そしたらイマド、屋敷の周囲はどうなってたか分かる?
――っと、あたしも一緒に観たほうが早いわね」
母さんが目を閉じる。共感能力を利用してイマドとシンクロして、同じ映像を観ようっていうんだろう。
けど確かにきちんと絞りこまないと、ベルデナードは広いから探しきれない。
「スラムじゃないわね、これ」
「絶対違いますって」
母さんとイマドが2人だけで納得しながら話をしているのは、考え様によっては不気味だ。