Episode:93
「そうそう、大人しくしてたほうが身のためよ。
さ、今あっためてあげるわね♪」
言うが早いか、ルーフェイアが今度はごく小さな炎を連発して、たちまち室温が上がる。
――ほんと、我が娘ながら凄いわね。
この魔法の使い分けとコントロールだけは、どうあがいてもあたしじゃかなわない。
まぁだからこそ、15歳でシュマーの総領になることを、約束されてるわけだけど……。
あと、およそ3年。
たったそれだけでこの子はあたしの代わりに、数千人の頂点に立つことになる。
あと僅か3年で……。
「――母さん?」
ちょんちょん、とルーフェイアが服の裾を引っ張ってきた。
「どうかしたの?」
「あ、なんでもないわ。
それよりルーフェイア、あんた相変わらずたいしたもんじゃない」
この言葉に、ルーフェイアが怪訝そうな顔を見せる。
「母さん……ほんとに大丈夫?」
「どういう意味よ」
可愛い娘だけど、こういう言われ方されるとちょっと不満。
「だって、母さんが……そんな風にあたしのこと、言うなんて……」
「あぁ、そういう意味? 別にどうもしてないわよ。しばらく見なかったけど、やっぱりさすがだと思っただけだから」
――あら大変。
言った瞬間ルーフェイアの顔が曇っちゃって、微妙にアレなところに触れたのに気づく。
このまま放っておいたら、この子ってば泣き出しちゃうわね。
「ごめんごめん、そういうつもりじゃなかったのよ。
さ、イマドかディアスのとこにでも行ってなさいね。あたしはこっち片付けちゃうから」
幸い間に合ったみたいで、この子が泣き出さないうちに手が打てた。
で、今度は男たちに振り向いて一言。
「でね、あなたたちにはちょっと、聞きたいことあるのよ」
聞ける相手は4人。うちひとりは、あたしが捕まえてきたファミリーの兵隊。
残る3人のうち2人も、どうみても用心棒。装備見れば分かっちゃう。
けど、わざと知らなそうな人間に訊いてみた。
「さ、ボスの『今の』居場所を教えてもらいましょうか?」
「し、知らねぇ……」
――なによ。
にっこり笑って問い掛けてあげたのに、こいつったら後ずさったりして。
「知らないわけないでしょ。ボスからの命令無しに、あんなことできるわけないんだから」
「知らねぇものは知らねぇよ!」
「あらそう」
まぁこんなただの用心棒が何か知ってるとは、あたしも思わないけど。
もっともわざわざ訊いてるのには、当然下心アリ。
「素直に言ってくれれば、手荒なマネしなくてすむんだけど?」
「だから、知らねぇって言ってるだろ!」
話を訊いてる男の顔色が変わる。
――別にあたし、何も言ってないんだけどな。
いったい何を想像したのやら。
もっとも縄解かれてる上に武器まで持たされてて、それでも逃げ出せないようなメンバー相手じゃ、しょうがないのかもしれないけど。
ただ、一つ読み間違いがあった。
「母さんお願い、そんなひどいことしないで!」
こっちも何を勘違いしたのか、ルーフェイアがあたしと男の間に割って入る。