Episode:91
「なんなのさ、これ?」
「人……じゃない?」
「んなのは見りゃ分かるさ。そうじゃなくて、どうしてこんなもんが届いたんだ?」
「俺に訊くなよ」
子供たちがみんなして、首をかしげる。
――まぁ、そうでしょうね。
届いたのは気を失ったうえに縛り上げられた男性が3人っていう、かなり珍しい物。
「こういうの、届け物って言うの……?」
ルーフェイアったら悩んでるし。
「届いたんだから届け物でしょ?」
「けど……」
せっかく説明してあげたけどこの子、いまいち納得できないみたい。
「ともかくこんなもの、引き取れないわよ!
ったく、誰がこんな悪趣味な冗談……」
「――俺だ」
レニーサが叫んだところへ、絶妙のタイミングでディアスが答える。
「俺だって……ディアス、あなたが?」
「あ、なるほどね。ホテルにいた連中、ディアスってば叩きのめしてきたんだ」
さすがあたしのダンナ♪ ただ尾けるだけじゃ、芸ないものね。
見ればディアス、してやったりって顔してるし。
「んじゃ、これがそのファミリーの一味ですか?」
「そしたらこいつらに、口割らせれば……」
みんなの瞳がなんだか輝き出す。
――分かる分かる。
こーゆーの楽しいもの。
「さっきあたしが捕まえたのも合わせて4人いるから、きっとどうにかなるでしょ♪」
「どうにかしてもらわないと困るわよ。
けどさっきあなたが言ってた方法、大丈夫なんでしょうね?」
なんだか信用ない言われかたねぇ。
けど、ちゃんと勝算はあるし。
「まぁ、見ててよ。それに万が一あたしがダメでも、イマドがいるし。
――ね?」
「………」
あら?
しかも答えがないのを訝しんでたら、ルーフェイアがすごい形相で睨みつけてきて。
「――母さんっ!」
「どうしたのよ?」
「どうしたもこうしたもないでしょっ!!」
さすがにこの剣幕には、あたしも少々驚かされる。
「どうして母さん、そうやって無神経なのっ!」
「あたしだって、神経くらい通ってるってば」
「そうじゃなくて!」
とりあえず口で親子ゲンカしながら、イマドのほうにあたし視線を向けた。
(あなたまさか、この力のこと黙ってたの?)
声に出さずに会話出来るのは、念話能力を持つ人間同士だけの、特典なのよね。
もっともこのボウヤは初めてだったらしくて、少しの間があってから答えが帰ってきたけど。
(――はい)
(よくそんなこと、今までしてたわね……)
そりゃ所構わず言えとは言わないけど、まるっきり内緒にしてたら、ストレスなんてもんじゃないでしょうに。
「カレアナ、なにがどうなってるの?」
「どうって言っても、大したことじゃないんだけどね」
一旦そう言ってから、あたしはもういっかいこのボウヤに視線を向けて。
(思いきって言っちゃいなさい。あなたが心配するほど、人は驚かないわよ。
それとも、あたしから言ったほうがいいかしら?)
決めかねてるんだろう、答えはなかった。