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Episode:87

「――それが甘いのよ〜♪」

 嬉しそうな言葉と同時に、風――というより突風――がそいつらへ吹きつけた。

 一瞬視界を奪われて、連中の動きが止まる。

 その時にはもうこの人、既に1人の首ともうひとりの胸を切り裂いてて、3人目の首筋へ峰打ちを決めるところだった。


「はい、これで終わりね♪」

 それこそ片付けものをしたみたいな気楽さで言う、ルーフェイアのお袋さんの足元に、最後のひとりが崩れ落ちる。


「ごめんなさいね、待たせちゃって」

「い、いえ……」

 って言うか、待つって言うほど待たされてない。


「この2人は始末したほうがいいかしら? 下手に放っておいて、アシがついてもヤだものねぇ」

 しかもスラム育ちのあたしでさえドキッとするような台詞を、日常会話みたいに口にする。


「――ま、どうにかしましょ。

 そうだ、誰かに……」

 集まってたヤジ馬に、この人が歩み寄った。


「ごめんなさい、誰かあたしの知り合いに知らせに行ってくれないかしら?

 もちろん、タダなんて言わないわ」

 この言葉にみんなが色めき立ったけど、名乗り出るのはいなかった。


 そりゃそうだろう。うっかり関わって、ファミリーのやつに目をつけられでもしたら大変だ。

 金は欲しい。けどそれ以上に命は惜しい。

 それがここだ。


「おばさん、ムチャですって。誰だって関わり合いになんかなりたくないんだ」

「そんなことないわよ。

――お願いできるかしら?」

 赤ん坊を背負ったまだ若い女の人に、ルーフェイアのお袋さんが声をかけた。

 あたりまえだけど、声をかけられた女性が視線を逸らす。


「場所はね、ここからそんなに遠くないの。そこでこれを見せて事の顛末言って、あたしが片付けて欲しいって言ってたって言えば分かるから」

 それからこの人が何か囁く。

 はっとしたように女性が顔を上げた。


「この子を、助けて……?」

「ごめんなさいね。あたしも医者じゃないから、さすがにそこまでの保証は無理だわ。

 それでもいい?」

「――やります」

 意を決した表情でこの女の人はそう答えて、ルーフェイアのお袋さんから短刀を受け取った。


「悪いけどよろしく頼むわね〜。

 あ、そうそう、して欲しいことはありったけ言うのよ?」

 ありったけって……。

 いったい何がどうなってるんだか。


 にしてもこないだルーフェイアのヤツがアヴァンで部屋いっぱいにドレスを用意してみたり、お袋さんがムチャクチャな条件をけしかけてたり、どうもこの一家ってのは桁外れだ。


「さ、どうにかここも片付きそうだし、行きましょ♪

 そうそう、もう1回訊くけどあなた、ケガはないのよね?」

「はい」

 それだけは保証つきだ。


「けど、あのヤク売りのほうが……」

 さっき襲われた時にちらっと、ビルの隙間へ潜り込んだのが見えた。あれじゃ先回りしてるナティたちも、追えたかどうか。

 けどあたしの心配をよそにこの人、けらけらと笑って手を振った。





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