Episode:85
◇Seamore
「イマドってさ、よくわかんないよね」
「それだけ食わせモンってことさ」
イマドのヤツがうまいことやって、売り上げ持って走るヤク売りを、あたしらはつけてた。
っても普通の尾行なんかじゃない。
こっちもそうだけど、向こうだってこの辺にはそれなりに詳しい。だからちょい、変わった方法をとった。
うちらのチームと向こうのチーム、総勢60人近くを2人組みで、要所要所の街角に立たせるって方法だ。
最初の組が顔を確認したら二手に分かれてひとりが尾行、もうひとりは裏道を通って、次に行きそうな場所へ待機してる組へ知らせる。あとはこの繰り返しだ。
この方法だったら次々尾行が変わるから気付かれにくいし、見失う確率もかなり低い。万が一予想と違う方向へ行ったとしても、尾行してるほうが次の連中に知らせるだけだ。
それに手の空いた連中を使って、関係ない方向に待機してる連中を集めることもできる。
大人数ならではのやり方だ。
――ま、学院で教わったやり方だったりするんだけどね。
そう言や学院の規定になんか、「学院内で習ったことを〜」とか言う項目があった気もするかな?
まぁどっちにしたってバレやしないだろうから、今回は無視だ。
「ナティ、あいつ5丁目へ行くんじゃないか?」
「そんな感じだね」
あいつが妙なところへ入ったのを見て、うちらはすぐに感づいた。
他の場所ならこの敷地内をわざわざ突っ切ったりしない。
「そしたらナティ、先回りして知らせてくれ。
あたしはこのままつける」
「わかった。気をつけてね?」
ふわっとナティが駆け出した。
――やっぱこいつ、度胸あるな。
つけてる相手を追い越すなんざ、そうそうできる芸当じゃない。
けどナティのヤツは「ちょっと急いでる」ふうで駆けてって、あっさり追い越してみせやがった。
そのままその姿が、敷地の向こうへ消える。
あたしはそのまま後をつけた。
ずっと昔に「なんとか開発計画」で建てられたって言う、2棟づづ向かい合わせに並んだ古アパートの間は、やけに見通しがいい。いちばん見つかりやすい場所だろう。
もっともここは抜け道になってるせいで、それなりに人通りがある。やたら近づきさえしなけりゃ、あたしもただの通行人だ。
案の定まだガキのヤク売りは、5丁目の方へ抜けた。
あとはここを抜けた先のT字路をどっちへ行くかだけど、当然そこは要所だから仲間が居る。
――割合簡単だったじゃん。
もうちょっとややこしいことになるかと思ったけど、予想が当たったせいで簡単に片付いちまった。
敷地を抜けて、また裏路地へ入る。
この辺は同じスラムでもショッピングモールに近いせいで、雰囲気は歓楽街だ。
問題のT字路まではもう目と鼻の先だった。
待機してるヤツや、ナティがいるのまで見える。
けど、その時。
後ろに気配を感じて、とっさに前へ身体を投げ出す。さっきまであたしがいた場所を、何かが薙いだ。
もっともあたしだって、そうそう負けちゃいられない。なにせこっちは学院生だ。
勢いを利用しながら手を付いて前転して、その反動で上手く起き上がる。ついでにその時には、愛用?の短銃が手にあるって寸法だ。
そしてそのまま後ろは見ずに、カンで撃った。
押し殺したみたいな悲鳴が上がる。




